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遺産分割をめぐっては、仲の良かった家族でもトラブルが起きるケースがあります。トラブルを防ぐためには、遺産分割の注意点をよく知っておく必要があります。みていきましょう。

「代理人が必要な遺産分割」の注意点

遺産分割協議で遺産分割する場合は相続人の全員が協議に加わる必要がありますが、さまざまな事情で参加できないケースもあります。

 

次のような事情で相続人が遺産分割協議に参加できない場合は、代理人が協議に参加します。

 

  • 相続人が未成年である
  • 相続人が認知症や精神障害などで判断能力が不十分である
  • 相続人が行方不明である

 

遺産分割で代理人が必要なケースについてみていきます。なお、遺言のとおりに遺産分割する場合は、遺産分割協議をしないため代理人の選任は不要です。

 

相続人が未成年の場合

未成年者は十分な判断能力がまだ備わっていないという理由から、法律上は遺産分割協議に加わることができません。相続人に未成年者がいる場合は、代理人が遺産分割協議に加わります。

 

ここで注意が必要になるのは、誰が代理人になるかです。通常、未成年者の代理人は親権者が務めます。ただし、親権者も同じ相続の相続人であれば代理人になることはできません。親権者が遺産分割協議で自分の利益を優先して、子供である未成年者が不利になる恐れがあるからです。

 

相続人の判断能力が不十分な場合

相続人が認知症や精神障害などにより判断能力が不十分な場合も、代理人が遺産分割協議に加わります。判断能力が不十分な人の代理人は成年後見人が務めます。成年後見人を選任するには家庭裁判所に申し出ます。

 

親族が成年後見人を務めていて同じ相続の相続人になっている場合は、遺産分割の代理人として特別代理人を選任しなければなりません。ただし、成年後見監督人がいる場合は成年後見監督人が代理を務めるため、特別代理人を選任する必要はありません。

 

【図表2】成年後見人の状況と遺産分割の代理人

 

相続人が行方不明の場合

相続人が行方不明の場合は、まずはどうにかして探し出します。しかし、相続税の申告期限が迫っているなど遺産分割を急ぐ場合は、不在者財産管理人を選任して遺産分割協議を進めます。

 

相続人が長期にわたって行方不明の場合や災害に遭って生存の見込みが低い場合は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることも一つの方法です。失踪宣告を受けると法律上その人は死亡したとみなされ、相続の権利はその人の子などに移ります。

「相続分の調整が必要な遺産分割」の注意点

遺産分割では、民法で定められた相続割合(法定相続分)をもとに誰がいくら相続するかを決めます。ただし、次のような場合は法定相続分で遺産分割するとかえって不公平になる恐れがあります。

 

  • 多額の生前贈与を受けた相続人がいる場合
  • 故人に多大な貢献をした相続人がいる場合

 

このほか、相続税の負担を考えたときに、法定相続分で遺産分割することが最適とは言えない場合もあります。遺産分割で相続分の調整が必要なケースをみていきましょう。

 

多額の生前贈与を受けた相続人がいる場合

故人から多額の生前贈与(特別受益)があった相続人がいるときは、特別受益があった相続人とそれ以外の相続人で公平に遺産分割できるように相続分を調整します。

 

具体的には、特別受益を遺産分割の対象である相続財産に持ち戻したうえで、それぞれの相続人の相続分を決定します。特別受益があった相続人は、相続分から特別受益を差し引いた分だけの遺産を受け取ります。

 

ただし、故人が遺言で特別受益について「持ち戻しの免除」を表明していれば、その財産は相続財産に持ち戻さずに遺産分割を行います。結婚して20年以上になる夫婦の間で自宅を生前贈与または遺贈した場合も、その自宅は相続財産に持ち戻さないことになりました(2019年7月1日施行)。

 

介護など故人に多大な貢献をした相続人がいる場合

故人を介護していたなど多大な貢献をした相続人がいる場合は、その貢献に見合った額の遺産(寄与分)を優先的に割り当てることが認められます。

 

通常期待される程度を超える貢献であれば、介護のほか借金の肩代わり、事業の手伝いなども寄与分として認められます。

 

相続税の負担について考慮が必要

遺産分割では、相続人が負担する相続税について考慮することも必要です。特例を適用して節税するのであれば、相続分を調整する方がよい場合もあります。

 

相続税の申告で配偶者の税額軽減を適用すれば、多くの場合で配偶者に相続税はかかりません。配偶者が多くの遺産を相続すると節税になりますが、次に配偶者が死亡したときに子が負担する相続税が多くなるというデメリットもあります。

 

故人と子が同居していた場合は、子が自宅を相続すると節税ができます。小規模宅地等の特例を適用すると、自宅の土地の評価額を最大で80%引き下げることができます。

 

これらの特例を活用した場合に、どのように遺産分割すれば最も税負担が軽減されるかについては、相続税に強い税理士に試算してもらうとよいでしょう。

特殊なケースでは専門家の力を借りることもできる

ここまで、遺産分割をするときの注意点をご紹介しました。遺産ごとに分割方法を指定した遺言書がある場合以外では、相続人どうしで話し合って遺産分割をします。

 

相続人同士で分け方を話し合うだけなので難しいことではありませんが、遺産分割に参加できない相続人がいて代理人の選任が必要なケースや、被相続人の介護をしていた相続人がいる、逆に特定の相続人が被相続人から多額の金銭的援助を受けていた、などの事情で相続分の調整が必要なケースでは、難しい手続きが必要だったり、時には争いに発展する場合もあります。

 

そういったケースに当てはまる場合には、専門家に相談しながら進めることもできます。代理人の選任や相続分の調整で不明な点があれば、遺産分割に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。

 

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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