(写真はイメージです/PIXTA)

契約不適合責任とは、契約に適合しない商品を引き渡した場合に追及される責任のことで、従来の瑕疵担保責任から改正されたものです。本記事では、不動産を売却する際に注意すべき契約不適合責任について解説していきます。

契約不適合責任とは

「契約不適合責任」は、2020年4月に施行された改正民法で新たに登場した用語です。従来「瑕疵(かし)担保責任」と呼ばれていたものの名称が変わり、内容も一部見直されました。

 

契約不適合責任とは、契約により引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものである場合に、引き渡した側に生じる責任をいいます。

 

たとえば、100個の傷のないリンゴを引き渡すとの契約であったにもかかわらず、これに反してリンゴが90個しか納品されなかった場合や、納品されたリンゴに傷がついていた場合に登場するのが契約不適合責任です。

 

同様に、雨漏りがしない中古住宅を購入する契約をしたにもかかわらず、引き渡された中古住宅が雨漏りしている場合にも、同様に売主に契約不適合責任が生じます。

 

従来の瑕疵担保責任との違い

従来の「瑕疵担保責任」と「契約不適合責任」とでは、主に次の3点が異なります。

 

◆対象物が違う

瑕疵担保責任では、その対象が特定物に限定されていました。

 

特定物とは、「そのもの」を特定して取引するものことです。たとえば、中古車や中古住宅は、一般的に「特定物」に該当します。

 

一般的に、これらはどれでも良いと考えて購入するのではなく、「走行距離1万キロメートルの事故車両ではないこの黒色の中古ベンツ」「千葉県〇〇市〇〇一丁目1番地1号に建っている中古住宅」など、そのものを特定して売買するものであるためです。

 

一方、「100個のリンゴ」はどのリンゴであっても問題なくおいしく食べられるものであれば良いため、一般的に特定物には該当しません。

 

このようなものを、特定物に対して不特定物といいます。契約不適合責任では、その対象が特定物に限定されておらず、不特定物についても対象となります。

 

◆対象となる欠陥が違う

瑕疵担保責任では、その責任の対象が「隠れた瑕疵(=キズ)」に限定されていました。

 

隠れた瑕疵とは、買主が要求されるような注意力を働かせたにもかかわらず発見できなかった瑕疵のことです。たとえば、先ほど挙げた雨漏り住宅の例であれば、買主が一見しても雨漏りする住宅であることがわからないような場合に、隠れた瑕疵に該当すると考えられます。

 

しかし、買主がその瑕疵が「隠れた瑕疵」であることを証明することは困難であり、隠れた瑕疵に該当するかどうかがしばしば問題となっていました。

 

一方で、契約不適合責任は、契約内容に適合していなければ責任の追及が可能であり、瑕疵が隠れているかどうかは関係ありません。この点で、契約不適合責任は瑕疵担保責任と比べて非常にシンプルであるといえます。

 

◆請求できる内容が違う

瑕疵担保責任で買主が売主に対して追及できる責任は、次の2つに限定されていました。

 

  • 損害賠償請求
  • 契約の解除

 

一方で、契約不適合責任では次の4つの追及が可能です。

 

  • 追完の請求
  • 代金減額請求
  • 損害賠償請求
  • 契約の解除

 

それぞれの具体的な内容については、後ほど詳しく解説します。

 

◆請求できる期間が違う

瑕疵担保責任では、瑕疵を知ったときから1年以内に権利行使をする必要があるとされていました。一方で、契約不適合責任の場合には、原則として不適合を知ってから1年以内に契約不適合がある旨を通知すれば良く、権利行使自体は1年を経過してからでも構いません。

 

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本記事はAuthense不動産法務のブログ・コラムを転載したものです。

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