(写真はイメージです/PIXTA)

契約不適合責任とは、契約に適合しない商品を引き渡した場合に追及される責任のことで、従来の瑕疵担保責任から改正されたものです。本記事では、不動産を売却する際に注意すべき契約不適合責任について解説していきます。

契約不適合責任で買主から請求され得る内容

契約不適合があった場合に、買主が売主に対して請求することができるものには、次の4つが認められています。

 

追完の請求

追完の請求とは、次のいずれかを追加で請求することにより、契約内容に適合した目的物の引き渡しを求めることをいいます。

 

  • 目的物の修補:購入した中古住宅が契約に反して雨漏りをしていた場合に、雨漏りしないよう屋根を直してもらうことなどです
  • 代替物の引渡し:新品の椅子を購入したにもかかわらず椅子の足が折れていた場合に、足の折れていない椅子に交換してもらうことなどです
  • 不足分の引渡し:100個のリンゴを購入したにもかかわらず90個しか入っていなかった場合に、不足していた10個の引き渡しを求めることなどです

 

このうち、どの方法で追完の請求をするのかは、原則として買主が選択することができます。

 

ただし、売主は買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることが可能です。

 

また、契約不適合の責任が買主側にある場合には、買主は履行の追完を求めることができません。

 

代金減額請求

代金減額請求とは、買主がその不適合の程度に応じて代金の減額を請求することです。

 

ただし、代金減額請求ができるのは、次の場合に限定されています。

 

  1. 買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をしたにもかかわらず、その期間内に履行の追完がないとき
  2. 履行の追完が不能であるとき
  3. 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき
  4. 契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時や一定の期間内に履行しなければ、契約した目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき
  5. 買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき

 

このうち「4」は、たとえば12月25日のクリスマスパーティー用との前提で8号の大きさのクリスマスケーキを注文したにもかかわらず、納品されたケーキが5号であった場合に、当日中に代替物の引き渡しなどの請求をしなかった場合などが該当します。

 

この場合には、翌日になってから8号のケーキに交換されても契約の目的を達成できないため、履行の追完の催告をすることなく代金の減額請求をすることが可能です。

 

なお、契約の不適合が買主の責任によるものである場合には、買主は代金減額請求をすることができません。

 

損害賠償請求

損害賠償請求とは、契約不適合によって生じた損害について金銭の支払を請求することです。履行の追完や代金減額請求をした場合であっても、これらと併せて損害賠償請求を行うことができます。

 

契約の解除

契約の解除とは、契約をなかったことにすることです。債務の全部の履行が不能であるなど一定の場合を除き、原則として先に履行の催告をし、一定期間内に履行がないときに解除をすることができるとされています。

 

ただし、債務の不履行がその契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除をすることができません。

契約不適合責任の期間

契約不適合責任を追及することができる期間は、次のとおりです。

 

種類や品質の契約不適合

次のいずれかの場合に契約不適合責任を追及するには、買主がその不適合を知ったときから1年以内に不適合である旨を売主に通知しなければなりません。

 

  • 種類の契約不適合:たとえば地目が宅地であるとの前提で購入契約をした土地の地目が田であった場合
  • 品質の契約不適合:たとえば雨漏りがしないとの内容で契約をした中古住宅が雨漏りする場合や、事故車両ではない自動車の購入契約をしたにもかかわらず事故車両であった場合

 

なお、1年以内に行うべきなのは不適合の通知のみであり、具体的な請求は次で解説する通常の消滅時効が到来する以前に行えばよいとされています。

 

数量や権利の契約不適合

次のいずれかの場合に契約不適合責任を追及することができる期間は、通常の消滅時効どおりです。

 

  • 数量の契約不適合:たとえば100個のリンゴを購入する契約をしたにもかかわらず90個しか納品されなかった場合
  • 権利の契約不適合:自由に利用することができる土地であるとの前提で購入契約をしたにもかかわらず実際には他者の借地権の対象となっていた場合

 

通常の消滅時効とは、次のとおりです。

 

  • 権利を行使することができることを知ったときから5年
  • 権利を行使することができるときから10年間

 

相手が業者である場合

買主が業者などの商人である場合には、一般消費者とは異なる規定が適用されます。商人間の売買においては、買主は売買の目的物の受領後、遅滞なくその物を検査しなければなりません。その検査で売買の目的物の契約不適合を発見したときは、ただちに売主に対してその旨の通知を発する必要があります。

 

仮に、ただちに通知をしなかった場合には、もはや履行の追完の請求や代金の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除など契約不適合責任の追及をすることができません。

 

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本記事はAuthense不動産法務のブログ・コラムを転載したものです。

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