(画像はイメージです/PIXTA)

資産家の父親が亡くなりました。相続人は長男と長女の2人です。ところが、長男の子どもが父親と養子縁組していたことが判明。長女は自分の相続分が3分の1になることに納得できません。なにか対応策はあるのでしょうか? 高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

養子縁組が「無効になるケース」もあるが…

では、節税目的の養子縁組は、有効なのでしょうか。

 

一般人の感覚からすれば、節税目的だろうが、そうでなかろうが、当事者が養子縁組をしたいとして、養子縁組届を出しているのだから有効だろうと思えます。

 

しかし、養子縁組届を出したとしても、民法802条で「当事者間に縁組みをする意思がないとき」は無効と規定されていることから、実質的に親子になる意思がなければ養子縁組は無効とされています。

 

実際、節税目的の養子縁組の有効性が争われた裁判では、2審の東京高裁判決が、節税目的の養子縁組で、「縁組みをする意思がないとき」に当たるから、養子縁組は無効と判断しています。

 

しかし、最高裁判決は、節税を目的としていても、養子縁組の意思は、節税目的と併存できることから、ただちに養子縁組の意思がないとはいえないと判断し、その事例では、養子縁組がなかったとする事情がないので、節税目的の養子縁組は有効としています。

 

以上のことから、回答の選択肢を検討していきたいと思います。

 

まず、養子縁組は未成年でも可能です。ただし、未成年の養子縁組には家庭裁判所の許可が必要となります。そこで、未成年との養子縁組は家庭裁判所の許可を取らないと、役所の戸籍係で養子縁組届を受理してくれないと思います。

 

したがって、未成年との養子縁組は無効であるとする選択肢①は誤りで、未成年との養子縁組も有効となるとする選択肢②が正解となります。

 

次に、節税目的の養子縁組についてですが、ご説明したとおり、節税目的の養子縁組は無効であるとする選択肢③は誤りで、節税目的の養子縁組でも有効となる場合があるとする選択肢④が正解となります。

 

今回は、正解が②と④ということとなります。

 

節税目的の養子縁組が有効であるとしても、養親となった太一さんと養子となった元気君がずっと別居していて、まったく親子として生活をしていなかったような場合には、養子縁組をする意思がなかったとして無効と判断される可能性はあります。

 

本件で花子さんが太一さんの養子縁組を争うとすれば、太一さんと元気君が親子として生活する意思がなかったということを主張立証していくこととなります。

 

ただ、本件では、元気君と太一さんは同居していて一緒に生活していることから、親子として生活する意思がなかったということを主張立証して養子縁組を無効とすることは難しいかもしれません。

 

したがって、相続分3分の1であることは受け入れざるを得ないということになりそうです。

 

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士

 

 

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