日本で亡くなる人は、年間130万人。亡くなる人の数だけ相続がありますが、お金が絡む話にはトラブルはつきものです。今回は兄妹の間で起きたトラブルについて、山田典正税理士が解説します。

【解説】法律的には問題のない遺産分割だが…

今回のご相談も、良くある相続トラブルのケースと言えると思います。

 

相続でトラブルが起きるのは、兄弟間だけではなく、姻族の方(婚姻によって発生する親族、配偶者やその親族)が相続の内容に口出しをすることにより起きるケースが多いです。兄弟姉妹間だけであれば多少は納得しないことがあっても仕方ないかと思えるところ、血の繋がりのない姻族の方が入ってくることで不満が増幅してトラブルになるケースが多いと言えます。

 

ただし、結果として言い争いは起きているものの、母が遺言を残しておいたお陰で裁判には発展しなかったわけで、ちゃんと対策はできていた事例であると言えます。

 

仮に母が遺言を作成していなかったらどうなっていたでしょうか。遺言が無い場合には、相続が発生した後に遺産分割協議を行い、相続の内容を確定させます。その際に相続分(今回のケースでは兄妹で1/2ずつ)を元に遺産分割を検討しますが、今回のケースのように双方が納得しない遺産分割協議は長引きます。どちらかが歩み寄ることが無ければ数年以上に渡り争われるケースもあります。

 

いわゆる未分割という状態になりますが、その間は未分割財産が共有状態にありますので、財産を処分や利用をすることに制限が入ります。そんな状態で争いが長引けば双方にとって大きなデメリットになります。

 

今回は遺言を作成していたことで、遺産分割協議は不要になりました。遺言書がある場合にも遺産分割協議を行うことは可能ですが、それには相続人全員の同意が必要です。

 

また、たとえば遺言書の内容が一方の相続人がすべての相続財産を相続するなど、極端に偏った相続になっていれば、相続人は遺留分という権利を主張できます。遺留分は相続分の1/2ですので、今回のケースでは遺留分は兄妹で1/4ずつです。

 

さらに今回は生命保険金が争いの元になっていますが、生命保険金は民法上の財産ではないため、原則として遺留分の対象になりません。つまり、生命保険金以外の財産で遺留分を計算することになりますので、今回はほぼ完璧な遺言書を作成していたと言えると思います。

 

今回の相続では、専門家に相談していたお陰で、法律面ではほぼ完璧な相続対策が取られていました。

 

ただ、法律面はフォローできても人の気持ちをフォローすることは難しいです。このような状態になると中々関係性を回復することは難しいと思います。争いが起きる原因は、お互いの利害の違い、立場の違い、価値観の違い、情報量の違い、にあります。この違いを埋めるには、コミュニケーションと歩み寄りにより、相手のことを理解するしかないと思います。お母さんの生前にもう少しコミュニケーションを重ねることができれば、争いを回避することが出来た可能性もあると考えると悔やまれるところです。

 

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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