工事技術が発達する以前、先人たちはいまよりも地形の影響を強く受けて生活していました。そのため地形は、その地で暮らし、歴史を作った人々と密接にかかわっていたといえます。いまも残る伝承や地名と地形との関係を紐解きながら、歴史的な背景を探ってみましょう。元国土交通省河川局長で日本水フォーラム代表理事の竹村公太郎氏が解説します。

内陸部の長野に「海」の地名…どういう意味があるの?

山の中に残された地名には、その土地の歴史の記録が残されていました。果たして、内陸部の長野県に存在した「海」とは、どんな意味なのでしょうか。それを探るべく地形を見てみると、地すべりのあとが発見されたのです。

 

 KEY WORD 

地すべり

 

海がないはずの、内陸の長野県北西の小谷村には「海」という字が付く地名が存在します。

 

まず、川の名前からして大海川と中海川。この2つの周囲は平坦地が多く、中海川の下流は湿地になっています。この流域は地すべりでできた地形で、そこから5方向へ地すべりが連動して起きたことを読み取ることができるのです。1か所が地すべりを起こすと、その場所が支えていた場所も抑えが利かなくなり、次々に動いてしまうわけです。また、地すべりだけでなく、場所によっては何度も崖崩れも起こっていたのかもしれません。

 

[図表3]長野にある“海”のつく川

 

地すべりの地形を、すべった場所の先端から、中海川の下流の湿地までを断面図にしてみます。すると点線のすべり面で地すべり地形が動き、大海川を止めていただろうことがわかります。

 

当時、中海川の湿地の場所には、水が溜まっていたのではないでしょうか。地形から考えれば、過去の地すべりが原因で河川がせき止められ、湖が形成されていたと考えられるのです。

 

これが山奥にある地名の「海」の由来で、「海」とは大きな湖を指していたのではないでしょうか。現在の中海川の湿地は、かつての湖の名残なのです。その周辺を調査すると、確かに地震が原因と思われる地すべり地形が多数発見されるのです。現在では、湖水はふたたび川となって流れてしまいましたが、「海」という地名だけが残されたのです。

 

[図表4]大海川を断面図で見る

 

 

竹村 公太郎

元国土交通省河川局長・日本水フォーラム代表理事

 

※本記事は『眺めるだけで教養が高まる! 日本の地形見るだけノート』(宝島社)から抜粋・再編集したものです。

 

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眺めるだけで教養が高まる! 日本の地形見るだけノート

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監修 竹村 公太郎

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