高額の資金が必要で大きなリスクがあるイメージの不動産投資ですが、興味はあるものの、不動産投資を少額ローリスクで始めたいという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、少額で始められる不動産投資方法や少額で始める際の注意点などについて解説します。少額の不動産投資とはどのようなものか、また自分に合っているかを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
1.【月1万~】少額で始められる不動産投資は3種類

不動産投資というと、物件を購入しそれを第三者に貸すことで家賃収入を得るという方法が一般的です。しかし、不動産投資のなかには「月1万円」といった少額から始められる投資方法もあります。ここでは少額不動産投資方法を3つご紹介します。
1.1. 不動産クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングとは、不動産投資に特化したクラウドファンディングのことです。不動産クラウドファンディングでは、事業者が物件に投資家を募り、集まった資金で物件を購入します。購入した物件の利益に応じて家賃収入や売却益などを投資家に分配する仕組みです。
不動産クラウドファンディングのメリットは、1口1万円から始められる手軽さです。不動産投資をまずはリスクの低い少額投資で始めてみたい方向きのサービスです。さらに、不動産投資で面倒な資金調達や書類の準備などの手間も省けます。
ただし、投資である不動産クラウドファンディングには、もちろんデメリットもあります。
元本割れの可能性があり、少額投資のため利幅が他の不動産投資に比べると低い点、流動性が低く中途解約が難しい点などです。
参考までに、不動産クラウドファンディングを行っているサービスを下記にあげておきます。
1.2. REIT(不動産投資信託)
REIT(リート)は、証券会社などの金融機関で販売されている不動産投資信託のことです。
2000年11月に投資信託及び投資法人に関する法律が改正され、日本でも不動産投資等が投資信託の運用対象に加わりました。日本では、Jを頭につけて「J-REIT」と呼ばれています。
具体的な仕組みは、まず不動産投資法人が発行する投資証券を投資家が購入します。不動産投資法人は集まった資金で複数の不動産に投資を行い、投資家は家賃収入や売却益などで利益を得ます。銘柄ごとに利回りに差があり、1%以下や5%以上のものまで幅広いです。
REITのメリットは、安定した収入を得られて流動性が高い点です。家賃収入を分配のメインにした銘柄を選べば、不景気であろうと安定した収入が見込めます。
また投資証券のため、購入や売却が簡単にできるのもメリットの1つです。さらに、5万円程から高くても70万円程で購入できるため、少額から不動産投資を開始したいという方には魅力的でしょう。
デメリットとしては、投資物件を投資家が選べないことや相場の変動が激しいことが挙げられます。投資物件は、原則として不動産投資法人に任せる形です。投資家本人が選べないので、
投資に失敗する場合もありえます。REITは売買が頻繁にできるため、株式市場の景況を受けやすく相場変動も大きいです。取引価格が大きく下がる場合もあるため、注意してください。もちろん、投資なので元本割れの可能性もあります。
下記は、J-REITで取り扱っている銘柄の一例です。

1.3. 不動産小口化商品
不動産小口化商品とは、不動産特定事業者が不動産を1口100万円程度で投資家に販売し、投資額に応じて利益を分配する不動産投資方法です。不動産特定事業者とは、国土交通大臣または都道府県知事の認可を受けた事業者をいいます。
不動産小口商品には「任意組合型」と「匿名組合型」があります。
「任意組合型」は投資家が共同事業主となり、1口100万円程度から投資可能です。運用期間は5年程度からで所有権も分配されます。
「匿名組合型」は、1口数万円程から投資可能で事業者が主体となり運営します。投資家に対しては、利益の一部を分配する方法で所有権は分配されません。運用期間は数ヵ月から長くて10年程度です。
不動産小口商品のメリットは、不動産運用のプロが選んだ物件に投資ができるということです。また、任意組合型では所有権が分配されているため、現金を不動産小口化商品に投資することで相続税の節税対策にもなるのです。さらに、不動産の運用は事業者がするため、実物不動産投資のように細かな手続きや管理業務なども発生しません。
デメリットとしては、実物不動産投資よりも利回りは低くなります。不動産小口化商品自体が新しい投資方法のため、投資できる物件の種類が少なく希望に合わない場合があるのもデメリットです。また、他の2つの不動産投資と同様に、元本割れの可能性もあるので注意しましょう。
下記は、不動産小口化商品で投資家を募集している案件例です。

不動産特定事業者の一例に『みんなで大家さん』があり、他の事業者よりも利回りが高く手厚いサポートで人気です。ただし、募集の総口数に制限があるので、希望の物件が購入できない場合もあります。
2.【自己資金100万~200万程度】小さく始めるときにおすすめの不動産投資

少額から始められる不動産投資には、先に紹介した3つの方法以外にも存在します。それは、少額購入できる単独の物件投資です。どのような投資方法なのか詳しく確認していきましょう。
2.1. マンションの区分所有
実際の物件のなかで、比較的少額の自己資金で投資を始められるのがマンションの区分所有です。マンションの区分所有とは、マンションの一室から購入するものです。
マンションの区分所有であれば、一千万円~数千万円程度で購入できる場合も多く、不動産投資ローンを活用すれば自己資金が100万円程度からでもスタートが可能です。また管理業務は管理会社に委託することで代理で行ってくれるため、本業が忙しいという時間の限られた方でも投資が可能です。
ただし、空室になると利益が0円となるリスクもあります。また設備故障などにより、想定外の費用が発生することもあります。手元に余裕資金がなければ資金がショートしてしまうリスクもあるため、ギリギリの資金で運用するのはやめておきましょう。
また、管理会社に依存する部分が多いため、管理会社選びは実績や経験年数などをもとに選ぶのが得策です。
2.2. 格安不動産の購入
格安不動産も少額で不動産投資が始められる物件です。立地や建物の大きさ、築年数にもよりますが、100万円前後から購入できる物件もあります。実物物件投資のためノウハウを学習でき、物件価格が安いほど利回りを期待できます。また、格安物件のため、自己資金が少額でも早めにローンを完済できる可能性が高いのもメリットです。
格安不動産のデメリットとしては、築年数がかなり経過しているものや、立地場所が郊外や駅から遠いという物件が多いことです。リフォームを行っても、条件面で集客が上手くいかず入居者が決まらない場合もあります。
また中古物件の場合は、仲介手数料が発生し初期費用がかさむことがあるので、購入前に忘れずに確認しましょう。
3. 少額で不動産投資を始めるメリット

少額で不動産投資を始めることにはメリットも多いです。具体的にどのようなメリットがあるのか解説していきます。
3.1. 不動産投資を簡単に始められる
不動産投資を始める場合、ネックの1つとなるのが資金調達です。資金が多額になれば、リスクも大きくなります。しかし、少額で不動産投資を始められれば、自己資金も少なくて済むのでリスクも抑えられます。
一般的には、不動産クラウドファンディングで1万円から、J-REITでは5万円程から、不動産小口化商品は100万円程からと不動産投資が少額から可能です。金融機関で資金調達などを行わず、自己資金で手軽に不動産投資が始められます。
また、少額で始められるマンション区分所有などは自己資金が100万円程から投資が可能で、運営自体は管理会社に任せられるので手軽にできます。
3.2. 物件選定の手間が省ける
不動産投資は、物件の立地条件や建物の大きさなどを選定し購入する難易度の高い投資のため、物件選定には経験や実績、相場などの知識が必要です。
その点、不動産クラウドファンディングでは投資物件や購入物件の選定は事業者が行います。事業者が物件選定後に、投資家は事業者が選定した物件を選んで投資する形なので、物件を選定する時間も手間も省けます。
本業が忙しくてなかなか時間が取れない方も安心して始めやすいというのが大きなメリットと言えるでしょう。
3.3. 節税効果が期待できる
少額の不動産投資は、節税効果が期待できます。
会社員が少額で不動産投資を行った場合、固定資産税や減価償却費が経費扱いにできるため、課税所得を減らせます。不動産購入に必要な費用(交通費や調査費用など)は、経費として計上できるので節税対策となるのです。
そして、建物の総額を一度に計上するのではなく、毎年分割して費用計上できるのが減価償却です。少額でも不動産投資をした場合、不動産投資の減価償却費の赤字額を給与所得と相殺できるため所得税を節税できます。
4. 少額で不動産投資を始めるデメリット

少額で不動産投資を始めることにはメリットも多いですが、いくつか注意したいデメリットも存在します。投資を始める前に必ず確認しておきましょう。
4.1. 投資対象が限られる
一般的に少額で不動産投資を始める場合、事業者が投資物件や購入物件を選定し投資家に利益を分配する方法が多いです。そのため、実際の物件購入のノウハウを身につけたい方には、少額で不動産投資を行うことは不向きだと言えます。
また少額での不動産投資では、希望の投資物件を選べないこともあります。都心の好条件の不動産(駅近物件や人気の立地など)は、高額の物件であることが多く選定対象として外れることが多いからです。不動産小口化商品のように比較的新しい投資方法の場合、供給量が追いつかず選べないといったこともあるでしょう。
4.2. 手数料がかかり利益率が低くなる
少額の不動産投資では、利回りも期待できるほど高くはありません。自己資金が少額の場合、不動産ローンの返済や仲介手数料などで実際に受け取れる利益は低くなります。
加えてJ-REITの場合は、売買ごとに手数料が発生し、利益を圧迫します。資産形成や副収入の柱として不動産投資を始めたい方には、少額の不動産投資では物足りない結果になることが多く不向きです。
4.3. 中途解約ができない場合がある
通常の不動産投資であれば、投資が赤字の場合には物件を売却して資金の回収という対策が取れます。しかし少額の不動産投資は、途中でやめたいと思っても解約できないケースが多いです。
たとえば不動産クラウドファンディングでは、クラウドファンディング事業者と「匿名組合契約」を締結している場合、中途解約できないことが契約内容に入っているため途中で解約ができず、運用期間内に投資分を途中回収できないことも多くあります。
少額で不動産投資を始められるとはいえ、換金性や流動性は低い場合があるため注意が必要です。不動産投資としては少額ですが、決して小さい出費ではないので、事前に必ず条件の確認をしましょう。
5. 少額の不動産投資がおすすめの人

ここまで少額の不動産投資について解説してきましたが、どのような方に向いている投資方法なのでしょうか? ここでは、少額の不動産投資がおすすめの方について紹介していきます。
5.1. 不動産を購入することに慣れたい人
少額での不動産投資は、不動産を購入して運用することに慣れたい方にはおすすめできる投資方法です。
不動産の物件購入は多額の資金を必要とするイメージですが、不動産クラウドファンディングなどの少額の不動産投資は少ない自己資金で手軽に購入できますし、事業者が運用や管理をするため手間もかかりません。
ただし、中途解約できないものや相場の変動が激しく投資に失敗する場合もあるので、事前に条件などをしっかり確認したうえで契約しましょう。
5.2. 投資リスクをできるだけ抑えたい人
少額での不動産投資は、リスクをできるだけ抑えたい人にはおすすめの投資方法です。
一般的な不動産投資は、多額の資金が必要となり、その分失敗したときのリスクも大きくなります。しかし、少額の不動産投資なら、少額の分リスクも小さく安心して始められるのです。
注意点は、リスクが小さいためリターンも小さいことです。少額の不動産投資は、資産形成をお考えの方にとっては物足りない投資方法なので別の不動産投資を検討しましょう。
5.3. 預金を効率よく運用したい人
預金を少しでも効率よく運用したい人には、少額で始められる不動産投資はおすすめです。
銀行に預けている預金は、金利が低く利益はほとんど望めません。しかし、少額の不動産投資であれば、ローリスクで投資が可能なため預金の運用にはもってこいです。リターンは小さいですが、預金の金利と比べると効率よく運用できます。
しかし、少額の不動産投資は元本割れする可能性もあるため、投資前に再度よく検討してみましょう。
6. 少額不動産投資はローリスクローリターンの投資

少額不動産投資は自己資金を少額で始められるため、リスクも小さくて済みます。しかし、リターンも少ないため、資産形成に不動産投資をお考えの方には、少額での不動産投資は不向きです。
また、少額の不動産投資は、比較的新しい不動産投資方法で情報も少ないため、初心者には不向きとも言えます。
ただし、不動産投資の感覚を掴みたい方や資産形成の導入として始めたい方にはおすすめの投資方法ですので、まずは負担の少ない金額から始めることをおすすめします。