新型コロナ禍、携帯電話障害、ATM障害、ランサムウエア攻撃、フェイクニュースの拡散、外国人の不動産購入…、これらはひょっとしたら敵国からの攻撃かもしれません。いま日本で、世界で何が起こっているのでしょうか。元・陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏が著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)で解説します。

日本は「目に目にみえない戦い」に敗北するのか

以上記述してきたように、我々がいまは平和なときだと思っていても、中国などが仕掛ける「目にみえない戦い」は進行している。このままでは「目にみえない戦い」に気づかないまま敗北してしまう可能性がある。

 

中国は、統一戦線工作の国家であり、「超限思考」の国家でもある。『超限戦』(喬良王湘穂著 劉琦訳 角川新書)は、原書が1999年に出版され、全世界に衝撃を与えた書である。

 

『超限戦』の本質は「目的のためには手段を選ばない。制限を加えず、あらゆる可能な手段を採用して目的を達成する」ことを徹底的に主張していることだ。民主主義諸国の基本的な価値観(生命の重視などの倫理、法律、自由、基本的人権など)の制限を超え、あらゆる境界(作戦空間、軍事と非軍事、正規と非正規、国際法)を超越する戦いを公然と主張している。

 

『超限戦』は、ロシアのマフィアの例を以下のように紹介している。

 

〈ロシアのマフィアは財や富を奪うため暗殺、誘拐のほか、ハッカーを使った銀行の電子システム襲撃などの手段を組み合わせているし、一部のテロ組織は政治目的のために、爆弾の投擲、人質の拉致、インターネット上の襲撃などの手段を組み合わせている。〉

 

たしかにマフィアやテロリストは、『超限戦』が推奨する勝利の法則や原則を、倫理や法などのあらゆる限界を超越して利用する。

 

一方、超限戦の行為の主体が国家であれば、話はマフィアやテロリストほど簡単ではない。

 

『超限戦』の主張は、突き詰めれば、国家もマフィアやテロリストたちと同じ論理で行動しなさいということだ。

 

しかし、国家が『超限戦』の論理で行動するときの反作用はあまりにも大きい。

 

結論として、国家が『超限戦』の教えを実践することにはリスクが大きすぎ、実行すべきではない。しかし、中国には民主主義国家のような倫理や法の限界などない。超限戦は日本をはじめとする民主主義国家がしてはいけない戦いなのだ。

 

超限思想を信じる国家にとって、日本は鴨がネギを背負った状態の“鴨ネギ”国家だと思う。目的のためには手段を選ばない手強い国に対して、日本はあまりにも無防備だ。

 

愚かなことに我が国は非常に多くの安全保障上の制約やタブーを、自ら設けている。日本人はもっと危機感をもたなければいけない。そして、鴨ネギ状態から脱却しなければいけない。

 

脅威には目にみえるものと目にみえないものがある。日本人は賢くなければいけないし、強くなければいけない。新たな危機と冷徹な国際社会の現実を踏まえ、未来を見据えた安全保障のあり方を議論すべきときが来ていると思う。
 

渡部 悦和
前・富士通システム統合研究所安全保障研究所長
元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー
元陸上自衛隊東部方面総監

 

 

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日本はすでに戦時下にある

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渡部 悦和

ワニブックス

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