銀歯にしたくないなら知るべき…〈白い人工歯〉の落とし穴【歯科医師が解説】

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銀歯にしたくないなら知るべき…〈白い人工歯〉の落とし穴【歯科医師が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

いまや健康保険を適用した歯科治療でも「白い歯」が選べる時代になりました。しかし、見た目は同じような「白い歯」であっても、保険適用か自由診療か、白い歯の“材料”は何か、どのような治療方法であったかなどによって治療の予後は大きく変わります。吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニック代表・吉田格氏が解説します。

白い歯にまつわるトラブル

このような技術革新に伴い、さまざまな誤解やトラブルもあるのでまとめてみます。

 

■銀歯を悪者にする白い歯商法

白い歯は患者さんにとって魅力的であると同時に、歯科医院では新たな需要増を見込めるものです。そのため金属の撤去を積極的にすすめる歯科医院は多くあります。

 

しかし金属を使った治療に対し誤った情報を与えているところもあるので、要注意です。

 

よくあるのが、金属はアレルギーの原因になるので外して白い歯に交換しましょうというもの。確かに健康保険で使われるパラジウムという金属は、安全性を疑問視する報告があります。

 

これは確かにあるかもしれませんが、ただちに治療を促すには不十分なので保留です。

 

私が最も問題と思うのが「銀歯(金属)は中がすぐムシ歯になるからセラミックに交換しましょう」という白い歯商法です。

 

写真3は金属が脱離してきた直後のもので、中が広くムシ歯になっているのがわかります。これを見るとそう思えてしまいますし、実際このようなケースはたくさんあります。

 

内部が広くムシ歯になっていることがわかる
[写真3]金属が脱離してきた直後の様子 内部が広くムシ歯になっていることがわかる

 

しかしそれは金属製だからというわけではありません。配慮が足りなく精度(ピッタリ度)の悪い金属を昔の弱いセメントで着けていた結果、数年のうちにセメントが崩壊し、その隙間にプラークが圧入された結果にすぎません。正しく作られたものであれば、このようなことはありえません。

 

残念ながら健康保険治療は低予算のため時間をかけて配慮した治療は難しく、このような結果が散見されます。これはやり方(技術)の問題なので、材料だけ変えても解決しません。しかしそれを金属のせいにしているのはおかしな話です。

 

セラミックスだからムシ歯予防になるということはなく、精度が悪ければ何を使っても予後不良になることを知っておきましょう。

 

■短期間での脱離

これらの治療法が実用化したのは、接着剤の性能が飛躍的に向上したことも大きな理由です。

 

歯と人工歯との接着は非常に難しいもので、その理解に乏しかった治療は早期に脱落する傾向にあります。現在、健康保険で起きている白い人工歯のトラブルの多くはこれなのだそうです。

 

新しい材料を正しく使う情報がまだ伝わっていないことが原因と考えられますが、今後は収束して行くものと思われます。

 

■短期間での破損

これは当初から懸念されていたことですが、白い人工歯は硬い反面脆く、金属ではありえない破損が度々見られます。

 

写真4は「1日で治る」というネット広告に惹かれ、旅行ついでに遠方にまで行って治療した結果です。

 

[写真4]短期間での破損

 

確かに設備さえあれば白い人工歯は1日で入りはします。しかし決して終わりではありません。

 

治療の前には必ず診査診断があって、その結果ご相談があり、治療が終わってからも調整し続けなければ、長く使うことはできません。

 

このようなトラブルは「かける時間(配慮)は健康保険と変わらず、材料だけ白く変えた自由診療」でもよく発生します。

 

一発完成ですから「仮の歯でお試し期間を過ごして問題点を発見する」という工程はすべて省略され、その分別な配慮が求められます。

 

■「セラミック矯正」は細心の注意を払って決断を

果たしてこれを矯正と呼んでいいものか、それ以前に治療と言っていいのか、たいへん疑問な結果になりやすい治療(?)があります。それが俗に言う「セラミック矯正」です。

 

ワイヤーやマウスピースを使いある期間に歯全体を動かす矯正ではなく、健康な歯を大きく削り、また多くの場合神経を取り(抜髄と言います)、人工歯を並べることで表面的な歯並びと色調を短時間で解決しようとするものです。

 

しかも最近はIOSとCAD/CAMのおかげできわめてスピーディーになり、特に若い女性が選ぶ傾向にあります。

 

セラミック矯正はもちろんちゃんとやれば悪いわけではなく、何がなんでも短期間に整然とした歯並びに変える必要がある人がいるのもわかります。しかしあまりに稚拙で、患者さんの足元しか見ていないような結果が目立つのがセラミック矯正の現状です。

 

写真5は前歯を含めて8本の健康な歯を大きく削り、歯並びと色をセラミックを被せることで解決しようとした結果です。確かに一見綺麗な人工歯が入っています。しかし唇をめくると、歯肉が真っ赤に腫れ上がり(写真5の上半分)、痛くて歯ブラシがかけられないとのことです。

 

上の写真では歯肉が真っ赤に腫れ上がっている
[写真5]セラミック矯正:一見綺麗な人工歯が入っているが… 上の写真では歯肉が真っ赤に腫れ上がっている

 

セラミック矯正は治療結果を急ぐあまり十分な診査診断や前準備がなされずに行われていることが多く、聞けばこのケースも非常に短期間で完了したもの、リスクについての説明もありませんでした。また歯の神経はすべて除去(抜髄)されており、レントゲンを撮ると予後に大きな不安を残す状態が写っていました。

 

歯肉の中を顕微鏡で観察すると、セメントの取り残しや、セラミックのマージンが合っていない状態が確認できました。

 

歯肉に麻酔をしてセメントをできるだけ除去すると1ヵ月後には炎症が引き(写真5の下半分)、なんとか痛みもなく歯を磨けるようになりましたがこれが限界です。

 

このような結果に遭遇するのは、若くて経験の乏しい歯科医師を安く雇い、短期間に設備投資の回収を狙っている歯科医院や美容クリニックが少なからず存在していることを示唆しています。

 

セラミック矯正は一見とても魅力的な治療に思えますが、犠牲になるものが多すぎます。かなり慎重にやってもトラブル発生率は上がりますので、短期的なメリットと長期的なデメリットを十分考え、見た目以上に中身をしっかりやってくれる所を選ぶ必要があります。

 

これがよく言われる「患者力」で、特に若い女性の心に響く派手な広告には、十分注意していただきたいものです。

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。