(※写真はイメージです/PIXTA)

ロシアによるウクライナ侵攻以降、国際社会では緊張が続いている。このウクライナ問題は、ロシアや東欧だけでなく、米国や中国、核問題、サイバーテロ、最新兵器など多様な問題が絡み合い、複雑さを増している。ロシアによるウクライナ侵攻が深刻さを増すにつれ、テロ・過激主義の観点からも懸念の声が広がっている。安全保障、国際テロ専門家が解説する。

ロシアによるウクライナ侵攻が内包するテロリスク

現在、ウクライナ入りしている外国人義勇兵/戦闘員について、そのモチベーションや背景はさまざまだろう。本当にウクライナを守ろうと使命感に燃える退役軍人もいれば、冒険心からやってきた軍事経験がない者など、戦闘に対するモチベーションの度合いや背景は各人によって違いがあると考えられる。

 

2014年前後の「イスラム国(IS)」最盛期に、シリアやイラクに渡った3万から4万とも言われる外国人戦闘員についての研究をみても、各人の動機やモチベーションは多種多様だった。こういったイスラム国の実態についての研究結果は、おそらく高い確率でウクライナに入った戦闘員にも当てはまるだろう。

 

すなわち、モチベーションや目的が多岐に渡るのであれば、これまでも暴力的な白人極右過激派の集結場所だったウクライナの門がこれまでになく開放された結果、上述したような白人極右過激派のメンバーやその共鳴者がウクライナ入りし、戦闘活動に参加している可能性は大いに考えられる。アゾフ大隊は既にウクライナ国家親衛隊に統合されており、過去のように白人極右過激派の受け皿になる可能性は低いと思われる。

 

しかし、ウクライナで国際的なネットワークを構築した彼らが、ジハード主義者のように帰国後に自国内で活動をエスカレートさせるリスク(イスラム国の時ほどにはならないだろうが)は排除できないとみる研究者も少なくない。

 

また、大量の武器が諸外国からウクライナに投入されているが、それが十分に管理されているのかも心配だ。以前、欧州ではユーゴ紛争で行方が不明となった武器がその後、欧州で発生したテロ事件で使用されたことがあるが、高性能の武器が闇市で取引され、一部の白人極右過激派などに渡る恐れもある。

 

今後、戦闘参加者の「サラダボール化」が徐々に明らかになるか?

 

一方、2015年からシリア内戦に軍事介入しているロシアは、中東出身の戦闘員1万6000人あまりを魅力的な報酬によりウクライナでの戦闘に参加させるという。1万6000人の中にはイスラム国と戦った戦闘員もいるとみられるが、イスラム国の関係者やその過激主義に賛同する者が含まれていない保証はない。

 

イスラム国の中にはチェチェン出身の戦闘員も多く見られ、彼らが帰国してテロ活動を起こさないかどうかを、ロシアは長年強く懸念していた。そうした戦闘員が混ざり込むリスクを承知のうえで、彼らをウクライナでの戦闘に参戦させようというわけだ。一方、長年プーチン政権と対立してきた亡命チェチェン人が義勇兵としてウクライナ側に協力しているとの報道もある。

 

このままの情勢が進めば、ウクライナではウクライナとロシアそれぞれの正規軍、欧米諸国からやってきた義勇兵、白人至上主義など極右過激主義者、さらに中東出身の義勇兵、イスラム過激主義者など、ありとあらゆる者が集う、正に戦闘参加者の「サラダボール化」が徐々に明らかになるかも知れない。

 

和田大樹
オオコシセキュリティコンサルタンツ アドバイザー

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