(※写真はイメージです/PIXTA)

患者が診察室に入るまでの「待ち時間」をなくすことはできません。しかし待ち時間を短縮する対策を講じることで、患者満足度の低下を防ぐだけでなく、診療や運営においてさまざまなメリットが期待できます。老木浩之氏の著書『開業する医者の9割が知らないクリニック経営で本当に大切なこと』(日本医療企画)より、「待ち時間対策」について見ていきましょう。

自動予約システム

自動予約システムは①②に関する対策です。待ち時間対策では予約制の導入が第一に検討されますが、スマホで予約できる自動予約システムが主流です。ただし、高齢者受診の障壁になり得ますので、受診時に職員が次回予約を入力する、電話やファックスでも予約できるようにするなど、他チャネルの用意も検討すべきです。

 

自動予約システムは大別すると、医療に特化したシステムと他業種(美容室など予約制の業種)で開発されたシステムがあります。一般的に他業種に対応したシステムのほうが低コストですが、電子カルテとの連動性が構築できないことが問題となります。医療に特化したシステムは、電子カルテとの連動だけでなく、自動再診受付機と連動させることができるものもあります。費用はその分かかりますが、受付作業の軽減と時間短縮にある程度は寄与します。

 

さて、自動予約システムの方式には、時間帯予約制、順番予約制、その2つを組み合わせたハイブリッドがあります。どの方式にするかは、診療内容と患者数によって変わってきます。患者さんにとっては、初めから受診時間が確定する時間帯予約制が最も利便性が高いはずです。しかし、診療時間が延びて予約時間が守れない場合があること、患者さんも予約通りに来院するわけではないことがスムーズな運営を難しくします。その点に対応して、たとえば、30分に2人のような余裕のある設定にすると、医者側の患者待ち時間が膨大に増えるという情けない状況になり、収益減に直結します。このように自動予約システムの導入は受診患者数の抑制に働きがちであることも注意点の1つです。

 

■どんな自動予約システムを選ぶべきか?4つのポイント

自動予約システムは電子カルテと同様、相当数のメーカーが乱立しています。選び方としては次の4つのポイントがあります。

 

1つ目は導入費用です。初期費用と並んでランニングコストもチェックしましょう。

 

2つ目は予約システムの方式です。耳鼻科のような急性期疾患に対応する診療科では順番予約制にせざるを得ないかもしれません。内科で慢性疾患への対応なら時間帯予約制がよいのですが、前述したように来院患者さんの年齢層に配慮する必要があります。

 

ハイブリッド方式は現状では期待するほどうまく機能せず、結局は受付職員の絶妙なさじ加減に頼ることになります。たとえば、当院のように、急性期疾患のための順番予約制と術後患者さんのフォローのための日程と時間帯予約をとらざるを得ない場合、手作業ハイブリッドのような運用になってしまいます。

 

3つ目は拡張性です。自動再診受付機との連動、待合室での順番表示モニターの設置など、サービスに拡張性があるかどうかがポイントです。

 

4つ目は運営会社の信用性です。運営会社が潰れた場合、電子カルテほど困ることはありませんが、それなりのストレスはかかるはずです。また、別の会社が運営を引き継ぐことになってもユーザー側の条件は一段、悪くなるのが通例です。潰れない会社を予見するのは不可能ですが、やはり規模が大きくユーザーの多い会社、営業マンから垣間見える会社の姿勢が信用できる会社を選ぶことになるでしょう。

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本連載は、老木浩之氏の著書『開業する医者の9割が知らないクリニック経営で本当に大切なこと』(日本医療企画)から一部を抜粋し、再構成したものです。

開業する医者の9割が知らないクリニック経営で本当に大切なこと

開業する医者の9割が知らないクリニック経営で本当に大切なこと

老木 浩之

日本医療企画

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