(※写真はイメージです/PIXTA)

「炎症」とは、体が有害な刺激を受けたり、体の中に異物が侵入してきたりしたときに起こる防御反応です。ところが同じ炎症でも“良い炎症”と“悪い炎症”があり、低レベルの炎症が何年にもわたり続く「慢性炎症」は、気づかないうちに老化やさまざまな病気を誘発する大変怖い現象とされています。慢性炎症を伴う病気には何があるのか、慢性炎症を加速させないためにはどうすれば良いのかを見ていきましょう。みなと芝クリニック院長・川本徹医師が解説します。

アレルギー疾患と慢性炎症

アトピー性皮膚炎や喘息は、慢性炎症が原因のアレルギー疾患です。

 

人にはそもそも細菌やウイルスなど人体にとって危険な異物が体に侵入したときに、これを撃退する仕組みが備わっています。それが免疫反応です。この反応が過剰に出てしまい、逆に自分の体を傷害してしまう病態をアレルギーといいます。

 

アレルギー反応はⅠ型からⅣ型の四つの型に分けられますが、アトピー性皮膚炎や花粉症などはI型(即時型)といいます。気管支などの粘膜や結合組織に存在する造血幹細胞由来の細胞である肥満細胞と、Ⅰ型アレルギー反応を引き起こす血液中にある抗体としての機能や構造をもつタンパク質であるIgE抗体が関係して、かゆみやくしゃみなどのアレルギー反応が起こります。IgE抗体は皮膚や粘膜の表面に広く存在し、アレルゲンと結合すると、肥満細胞からヒスタミンなどの物質が放出され、炎症が起こるという仕組みです。通常はアレルゲンがなくなるまでこの反応が続きます。重症になると、ナッツアレルギーや蕎麦アレルギーなど、アナフィラキシーショックを起こすものもあります。

 

気管支喘息では、好酸球やリンパ球、肥満細胞などの白血球と、気道を構成する細胞が関係して、さまざまなアレルゲンや環境変化に対し過敏に反応するようになります。

 

アレルギーの原因物質であるアレルゲンの種類は実に多彩で、その人の体質により症状が出たり出なかったりします。ただアレルギー疾患は、現在は治療で症状を軽減しながら付き合っていく病気になっていますから、症状がつらい場合には生活の質を維持するためにも医療機関にかかるということが大切です。

 

ちなみに本来は異物ではない自分の体を構成する細胞や成分に反応して生じるものは、自己免疫疾患といいます。代表的なものには関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、またクローン病もそうではないかといわれています。

炎症を加速させる生活習慣とは?

慢性炎症は、気づかないうちに老化やさまざまな病気を誘発する大変怖い現象です。これは老化しやすい人や病気にかかりやすい人の背景に、慢性炎症があるということを物語っています。

 

慢性炎症の原因には、体質や感染症のように避けられないものもあれば、生活習慣のように改善できるものもあります。

 

慢性炎症を加速させてしまう過ごし方とはどのようなものなのか、そして慢性炎症の影響をできるだけ小さくするにはどうしたらいいのか、ということを理解することでさまざまな病気を避けられるようになるのです。

 

■食事面:食べ過ぎ、暴飲暴食、早食い、栄養の偏りなど

食生活では、食べ過ぎが影響します。

 

具体的には、脂肪たっぷりの肉中心の食事、甘いもの・間食を欠かさない、揚げ物やファストフード、スナック菓子などのジャンクフードをついつい食べ過ぎてしまう、野菜をあまりとらないなど、メタボの原因となるような生活と共通します。仕事柄、お酒や食事会を伴った接待が多い人は、積もり積もれば脂肪肝につながります。

 

さらに食べ方でいえば、血糖値の急上昇を招くような食べ方は、インスリンが必要以上に分泌され脂肪肝になるリスクを高めます。暴飲暴食やよく噛まずに早食いをする、空腹時にご飯などの糖質主体の食べ物をかき込むように食べることなどは、極力避けるべきです。また極端に糖質を制限する、野菜しか食べないといったダイエットもインスリン抵抗性を招き、脂肪肝の原因となります。

 

■生活面:運動不足、ストレス過多、喫煙、歯周病の放置、寝不足など

生活面では、歩くのは好きではない、座っている時間が長いといった運動不足の解消が筆頭となります。またストレスが多い日々を過ごし、タバコを吸う、歯周病があるのに治療していない、いつも寝不足がちであるといった生活は脂肪肝への近道となり得ます。このような生活を続けることが体内のホルモン分泌や自律神経機能に影響を及ぼして過食の原因や免疫力の低下や炎症の原因にもなります。

 

■やはり「お酒の飲み過ぎ」は大敵

やはり気を付けたいのがお酒の飲み過ぎです。飲酒を原因とするアルコール性脂肪肝の一部は「アルコール性脂肪性肝炎(ASH)」へと進みます。アルコール摂取がやめられない病気に「アルコール依存症(アディクション)」があります。この場合には専門的な治療が必要になりますので、アルコール依存症の診療を行っている精神科などの医療機関を受診するのがベストです。または、かかりつけ医に相談するのが良いでしょう。

 

慢性炎症を回避するには結局、適度な運動とバランスのとれた食事、質の良い睡眠、ストレスが過剰でない生活を続けることであり、それはとても地道なものです。やはり毎日の積み重ねの上にあるものということがよく分かります。

 

 

川本 徹

みなと芝クリニック 院長

 

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※本連載は、川本徹氏の著書『死肪肝』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

死肪肝

死肪肝

川本 徹

幻冬舎メディアコンサルティング

沈黙の臓器、肝臓。 「気付いたときにはすでに手遅れ」を防ぐために――。 臨床と消化器がんを研究し、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでがん治療の最先端研究に携わった著者が、脂肪肝の基礎知識とともに肝…

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