(※写真はイメージです/PIXTA)

いまや日本人の3人に1人が脂肪肝であり、放置すると肝硬変や肝がんへと進行する――。にわかには信じられないことかもしれませんが、これは最近の研究で明らかになった事実です。なぜ脂肪肝が肝硬変や肝がんへと繋がりうるのでしょうか? 最近の研究でわかってきた事実を基に見ていきましょう。みなと芝クリニック院長・川本徹医師が恐ろしい「炎症」について解説します。

良い炎症、悪い炎症

炎症にも色々ありますが、大きく分けると急性炎症、慢性炎症、そして加齢による炎症の3つがあります。このうち人の体に害を与えてしまうことから、近年要注意とされているのが慢性炎症と加齢による炎症です。

 

急性炎症は短期間に収束する炎症のことで、ケガをした時や風邪など数日間で治る一過性の炎症がこれに当たります。通常は炎症反応のピークを過ぎると、傷ついた細胞は健康な状態に戻っていきます。熱が出たりするのは不快な症状かもしれませんが、感染や病気から体を守るという意味では必要な反応です。

 

対して慢性炎症は、低レベルの炎症が何年にもわたり続いている状態のことを指します。炎症が収束しないために、常に細胞間で炎症を収束させようとやりとりが続きます。火事でいえばボヤのような、小さな火種が燃え続けているイメージです。

 

慢性炎症を伴う病気にはさまざまなものがあります。ウイルスが肝臓の中に居続けるB型・C型肝炎や、歯周ポケットに細菌が居続ける歯周病、過剰な免疫反応が続くことで起こるアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎や喘息、関節リウマチなどの自己免疫疾患も含まれます。

 

ここで忘れてはならないのが炎症が起きた部分は、一度は傷ついた状態になるということです。同じ場所で炎症が何度も繰り返されると傷の修復が追いつかなくなり、細胞や組織が傷んで劣化していきます。この積み重ねが、細胞や組織の機能低下を招き、さまざまな全身疾患へとつながってしまうと考えられています。

 

もう一つの「加齢炎症」は、細胞が老化することによって起こる炎症です。老化した細胞は普通の細胞のように死なずにそのまま体の中に存在し続けます。そして周囲に炎症性の物質(医学用語では、細胞から分泌される低分子のタンパク質で生理活性物質の総称であるサイトカインや、サイトカインの一群であるケモカインといった炎症性サイトカインという)を多く分泌し続けます。これも、さまざまな疾患へとつながっていく原因となります。

 

これらの炎症性の物質は、一つの細胞が老化すると、周りの細胞も同調して周囲に広がっていくという特徴があり、この現象は、細胞老化関連分泌現象(SASP)とも呼ばれています。こうしたメカニズムが明らかになるにつれ、慢性炎症を軽視することが恐ろしいということが知られるようになってきたのです。

 

慢性炎症や加齢炎症は、徐々にゆっくりと起きてくるため自覚症状がありません。気づきにくいから放置されてしまう、非常に厄介なものです。

次ページ慢性炎症は加齢に伴い起きやすくなる

※本連載は、川本徹氏の著書『死肪肝』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

死肪肝

死肪肝

川本 徹

幻冬舎メディアコンサルティング

沈黙の臓器、肝臓。 「気付いたときにはすでに手遅れ」を防ぐために――。 臨床と消化器がんを研究し、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでがん治療の最先端研究に携わった著者が、脂肪肝の基礎知識とともに肝…

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