(※写真はイメージです/PIXTA)

サブリース目的でビルを購入した買主。仲介業者が作成した家賃管理表を確認したところ、10万円以上異なる賃料が記載されていました。この場合、「説明・告知義務違反」として仲介業者に損害賠償を求めることはできるのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。

裁判所は仲介業者の「説明・告知義務違反」を認定

この事案について、裁判所は

 

「仲介業者は、買主とのあいだで、本件仲介契約を締結したのであるから、買主に対し、本件仲介契約に基づく善管注意義務として、不動産売買契約の締結にあたり、買主にとって重要な事項について、自ら調査し又は売主から資料等の提供を受けるなどして、正確な情報を説明、告知すべき義務を負うと解するのが相当である」

 

「本件建物は、鉄筋コンクリート造陸屋根5階建ての共同住宅兼事務所であり、いわゆる賃貸用の物件であるから、その賃貸借契約の状況は、不動産売買契約の締結にあたり、買主にとって重要な事項であると認められ、仲介業者は、買主に対し、その正確な情報を説明、告知すべき義務を負うと解するのが相当である」

 

と判断しました。

 

と述べたうえで、本件の事実関係に照らせば

 

「仲介業者は、買主に対し、本件建物に係る賃貸借契約の状況について、正確な情報を説明、告知したとはいえない。

よって、仲介業者は、買主に対し、本件建物の賃貸借契約の状況に係る説明、告知義務違反により債務不履行責任を負う。

 

また、買主の損害額については

 

「仲介業者が説明していた賃料収入額と実際の賃料収入額とのあいだには、本件建物の引渡し後(平成30年2月)から現在(本件訴訟の口頭弁論終結時である令和元年10月)までのあいだ、合計マイナス143万5,000円の差額が生じたのであるから、同額をもって、仲介業者の債務不履行による損害と認めるのが相当である。」

 

と判断しています。

仲介業者の反論は裁判所には認められず

仲介業者の言い分としては、買主側が契約を急いでいる一方で、売主側に資料等の提出を求めても協力が得られなかったなかで、できる限りの説明を尽くしたので義務違反はない、というものでした。

 

しかし、仲介業者のこのような言い分に対して、裁判所は、以下のように述べて仲介業者の反論を認めませんでした。

 

「この点、たしかに、仲介業者は、売主に対し、賃貸借契約書等の資料の提出を求めるなどしており、売主がこれに十分に対応しなかった面があることは否めないものの、そもそもの発端は、仲介業者において売主から十分な資料が提出されていないにもかかわらず、いわば見切り発車的に専属専任媒介契約を締結してしまったことにあるといわざるを得ない。

 

その点を措いても、本件建物に係る賃貸借契約の状況につき、客観的な裏付け資料を確認することができていないのであれば、買主に対し、少なくともその旨を明確に説明すべきであった

 

よって、売主が賃貸借契約書等の提出に応じなかったことをもって、仲介業者が買主に対する債務不履行責任を免れることはできない。」

 

不動産売買の仲介業者の説明義務違反を巡る紛争のうち、本件は、収益物件の売買における説明・告知義務違反を認めた事例として参考になる事例です。

 

次ページまだあった…仲介業者の「ずさんな仕事」

※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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