わが子の顔も忘れ…認知症の高齢母、父の遺産相続を〈スキップ〉できるか?【司法書士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

近年では平均寿命が延びたことから、相続の際に「相続人の認知症」が問題となるケースも増えてきました。認知症が進行し、わが子の認識も危うくなった老親への対処は、どうすればいいのでしょうか。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が解説します。

高齢母は認知症、父の遺産は相続させずにすませたい…

 相談内容 

 

父親が死亡し、相続が発生しました。相続人は長女である私と、80代の母親の2人です。

 

母親は認知症で、横浜市の老人ホームに入居しています。認知症の度合いは深刻で、娘である私の顔も名前も分からないような状態です。医師の先生によると、回復の見込みはないそうです。

 

母親は高齢なので相続はさせず、子どもである私がすべて相続したいのですが、可能でしょうか?

深刻な認知症の発症後では、対処の方法なし

 回 答 

 

相談者の方のケースでは、母親は精神上の障害により判断能力を欠く状況にあると考えられます。

 

精神上の障害により判断能力を欠く場合、各種の法律行為をすることができません。

 

遺産分割協議もそのひとつです。

 

遺産分割は、被相続人の財産の共同相続人による共有状態を解消して具体的に分割する手続であり、契約であるため、「法律行為」となり、遺産分割をするためには「判断能力」が必要となります。

 

●法律行為=遺産分割協議

●意思能力を有しないもの=認知症の相続人

 

今回のケースにおいては、相談者の方は、母親の住所地の家庭裁判所に母親の成年後見開始の申立てをし、選任された成年後見人との間で遺産分割協議をすることが可能です。

 

「成年後見制度」の申立て方法について

 

裁判所ウェブサイト:成年後見制度の申立て方法(https://www.courts.go.jp/chiba/saiban/tetuzuki/l4/Vcms4_00000444.html)

 

ただ、今回のケースについては、残念ながら長女である相談者の方が成年後見人と選任される可能性は低いのではないでしょうか。

 

なぜなら、今回の父親の相続により発生した遺産分割協議において、長女である相談者の方と、被後見人である母親とその成年後見人は、「利益相反行為」となる可能性が極めて高いからです。

 

「成年後見制度」については、メリットもありますが、デメリットもあります。

 

デメリットには下記のような点が挙げられます。

 

●成年後見人の選任には申立て費用がかかる

●成年後見人は家庭裁判所が選ぶ

●成年後見人の報酬は死亡まで発生する

●本人の財産は本人のため以外に使うことができない

●成年後見人をいったん申立てると。途中で止めることができない

 

このように「相続が発生後」では、なにもできない状況となってしまいます。

 

これらを回避するためには「生前」に、死後に遺産分割協議をしなくてもいいように
「遺言書」や「家族信託」などを作成、あるいは定めておくことが肝要なのです。

 

 

近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

 

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司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi

横浜市出身。横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。

取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。

著者紹介

連載現場第一主義の司法書士がレクチャーする「相続まめ知識」

本記事は、司法書士法人 近藤事務所が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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