(※写真はイメージです/PIXTA)

「贈与」という制度は、相続税対策の王道として活用される一方、きょうだい間でもめる原因になりがちです。親子の何気ないやりとりや子どもたちへの配慮がかえって火種になることも珍しくありません。もめごとを避けるには、どうすれば良いのでしょうか? 税理士法人レガシィ『「生前贈与」のやってはいけない』(青春出版社)より、もめない贈与のポイントを解説します。

置物、絵画、和服…「形あるもの」の贈与はもめやすい

もめごとを避けるには、何をどう贈与するかも重要です。それによって、きょうだいのもめごとが起きにくくなったり、起きやすくなったりするからです。

 

もめごとが起きにくいのは現金の贈与です。形に残りませんから、あげた親ともらった子さえ黙っていれば、まず表には出てきません。少なくとも3年たてば、わざわざ表に出す必要もありません。

 

問題なのは形があるものです。たとえば、家やマンションといった物件はもちろんですが、立派な置物や絵画など、わかりやすいものを贈与すると話がややこしくなります。

 

よく問題になるのは和服です。こんなことがありました。

 

亡くなったお母さんには2人の娘さんがいて、生前に一時同居していた長女が、引っ越しの際に着物をほとんど持っていってしまったのです。おそらく、お母さんも「もう着ないからいいわよ」くらいのことは言ったのかもしれませんので、贈与にはなるでしょう。ただ、古い着物はよほどのものでない限り、相続財産に含める価値はありません。私たち税理士は黙っていますし、税務署も気がつきません。気がついても問題にはしないでしょう。

 

しかし、次女にとっては重要な問題でした。タンスにあったはずの着物がごっそりなくなっているのを、相続のときに知ったようです。もっとも、それを表立って口に出すことはありませんでした。そんなものを、もらった、もらわないと言い出したら、もめごとになるだけだとわかっていたからです。

 

とはいえ、お母さんの形見でもある着物ですから、心の中ではさぞかし憤懣(ふんまん)やるかたなかったのではないかと想像します。

 

■贈与はいわば「親の愛情の奪い合い」。金銭的な価値が問題なのではない

こういうことはよくあるのです。私たちの仕事が終わり、ご家族とお茶を飲みながら雑談をしていると、「タンスにあんなに着物があったのに、どうしたんでしょう」というせりふがぽろっと出てくることがあります。そんなひと言に、本心が出てしまうのでしょうが、下手をしたらそこでドンパチがはじまるかもしれません。ですから、そうしたことばを聞くと、私たちはギクッとしてしまうのです。

 

これは贈与にまつわる問題ではありますが、金銭的な価値が問題なのではありません。いわば親の愛情の奪い合いといってもよいでしょう。こんなことを言うと怒られそうですが、男同士よりも女同士のほうが、思い出の品に対する執着が強いようです。他人が見たら価値のないアクセサリー一つでも、姉妹の仲が険悪になることがあります。

 

男の場合は、そうした品ではなく、「兄貴のほうが結婚式が盛大だった」「オレは公立だったのに、弟は私立だった」という過去の出来事で険悪になる傾向があるようです。

次ページ現金の贈与であっても「生命保険金」は要注意

※本連載は、税理士法人レガシィ、天野隆氏、天野大輔氏による共著『 「生前贈与」のやってはいけない 知らないと損する相続の新常識』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「生前贈与」のやってはいけない 知らないと損する相続の新常識

「生前贈与」のやってはいけない 知らないと損する相続の新常識

税理士法人レガシィ
天野 隆
天野 大輔

青春出版社

近い将来、贈与税が改正されるのでないか、として注目を集めている「生前贈与」。相続対策の王道ともいえる節税術が使えなくなる前に、「駆け込み贈与」をしようと考える人が増えています。しかし、単に贈与をすればいいわけで…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧