(※写真はイメージです/PIXTA)

暦年贈与は相続税節税にとって強力な武器となります。ところが、毎年基礎控除110万円の枠内できちんと暦年贈与していたつもりが、税務署に認められずに、相続税をがっぽりとられたという事象も発生しています。税理士法人レガシィ『「生前贈与」のやってはいけない 』(青春出版社)より、「暦年贈与の落とし穴」とその対処法について解説します。

暦年贈与における最大の落とし穴、名義預金

定期贈与にも増して、税務署の格好のターゲットが「名義預金」です。

 

名義預金とは、預金の名義は子どもや孫であっても、実際には親や祖父母が管理している預金口座のことです。

 

名義預金は、相続税のチェックにあたって税務署が狙いをつける重要なポイントです。

 

税務署から親の財産とみなされやすいため注意が必要です。これが暦年贈与の第二にして最大の落とし穴です。

 

なぜ、これが問題になるのでしょうか。ここで問題なのは、110万円をどのように子どもに渡すかという点です。もしここで、子どもが普段使っている銀行口座に振り込むのなら問題はありません。

 

でも、そこで親は考えます。

 

「だまっていてもお金が入ってくるのは、教育的によくないのではないか。じゃあ、子どもには黙って口座をつくってあげて、そこにお金を貯めておこう」

 

子どものためを思って、そういうことをする気持ちはよくわかります。しかし、そうしてつくった預金口座こそが、まさに名義預金なのです。

 

印鑑も通帳もカードも親が持っていて、子どもには預金口座があることすら知らせていなければ、完全な名義預金です。名義は子どもであっても、実質的に親の預金だと判断されてしまうのです。親が亡くなって相続がはじまると、この預金は親の財産のまま。亡くなった親は子どもに財産を移動したつもりなのに、相続税の課税対象になってしまうのです。これでは節税にはなりません。

 

しかも、名義預金には時効(専門的には除斥期間といいます)がありません。

 

贈与ならば、亡くなる3年以上前の贈与額が相続財産に合算されることはありません。また、贈与税がかかることを知らずに申告を怠っていた場合の時効は6年間(故意に怠っていた場合は7年間)です。

 

しかし、名義預金は贈与ではありません。贈与として認められていない以上、何年前の振込みであっても親の財産のままです。だから、時効がないということになります。相続が発生すると、税務署は公平な制度として相続税をとるために、名義預金の存在がないかどうか徹底的に狙ってきます。このことは、ぜひ頭に入れておいてください。

次ページ税務署に「名義預金ではない」と証明するには?

※本連載は、税理士法人レガシィ、天野隆氏、天野大輔氏による共著『 「生前贈与」のやってはいけない 知らないと損する相続の新常識』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「生前贈与」のやってはいけない 知らないと損する相続の新常識

「生前贈与」のやってはいけない 知らないと損する相続の新常識

税理士法人レガシィ
天野 隆
天野 大輔

青春出版社

近い将来、贈与税が改正されるのでないか、として注目を集めている「生前贈与」。相続対策の王道ともいえる節税術が使えなくなる前に、「駆け込み贈与」をしようと考える人が増えています。しかし、単に贈与をすればいいわけで…

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