(※写真はイメージです/PIXTA)

糖尿病の発症リスクを減らすためには、内臓脂肪を溜めないようにすることが重要です。今回は、内臓脂肪を溜めないようにする方法として、最近話題になっている「糖質制限」について見ていくことにしましょう。もともとは糖尿病の治療として提案された方法ですが、糖尿病リスクの低減やダイエット効果もあるとして、ネット上や書籍でもたびたび見かけるようになりました。しかし「白米や小麦を摂ってはいけない」といった極端な情報もあり、糖尿病のない人が行うにあたっては注意が必要です。※本稿は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師並びに株式会社イームス代表取締役社長・藤井祐介氏との共同執筆によるものです。

 

(4)糖質の代わりにタンパク質を多く摂ることによる影響

糖質制限では、糖質を制限する代わりに、タンパク質や脂質を多めに摂るように指導します。タンパク質は通常、体重1kg当たり1g摂ることが推奨されています。たとえば体重が60kgの人は1日60gのタンパク質を摂る必要があります。糖質制限では1kg当たり1.2から場合によっては2g摂る必要があります。つまり体重60kgの人で、1日当たり70〜120gのタンパク質を摂ることが推奨されるのです。

 

タンパク質を多く摂るにあたり、問題となるのは品質です。たとえば、タンパク質の多くを肉から摂ろうとすると、育てる段階で使われた抗生物質も同時に摂取したり、安全とは言えない飼料の影響も受けたりする恐れがあります。それ以外の魚や植物性のものから摂る場合でも、品質によってはさまざまな環境汚染物質が体内に蓄積する可能性があります。

 

また、タンパク質を多く摂ることで発がん性が高くなるというエビデンスもあります。腸内環境並びに消化不良による異常発酵から腸管内に発生するアミン毒素などが関係していると言われています。

 

つまり、糖質制限をすることに伴う、タンパク質摂取量の増加が、健康にどのような影響を与えるかは、糖質制限の歴史が浅い現在ではまだ分かっていないのです。糖質制限を推奨する人は、この疑問に対してきちんと答える必要があります。

 

(5)健常者が長期的に糖質制限をする効果については明確なエビデンスなし

糖尿病の患者さんやインスリン抵抗性のある肥満症の人であれば、専門家の管理のもとで行う「厳格な炭水化物制限」にはある程度のメリットがあるということは冷静に議論すればコンセンサスは得ることが可能だと思います。しかし、健常な人が長期的に厳格な炭水化物制限をすることの予後についてははっきりとした研究はまだありません。

 

糖質制限を長期間続けるということは、主力エンジンを休ませて、補助エンジンを主体に動かして、生命エネルギーを供給しようという考え方です。その長期的な影響については、ヒトの場合はまだまだ分かっていないことが多いのです。

 

ケトン体がアンチエイジングの作用があるという動物実験レベルの研究はありますが、ヒトにおいて厳密な炭水化物制限を継続すると実際に寿命が伸びるというエビデンスはまだないのです。

 

動物実験レベルで証明されたことが、そのままヒトにも当てはまるとは限りません。さまざまな食材や有効成分あるいは食事療法が身体にいいと言って、ブームになることがよくありますが、動物実験レベルでの研究結果しかないのにも関わらず、ヒトにも当てはまるかのように言いはやされていることが多いのです。その点を明確にすることは医療情報を見る上ではとても大切なことです。

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自己治癒力を高める医療 実践編

自己治癒力を高める医療 実践編

小西 康弘

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病気や症状は突然現れるのではなく、それまでの過程に、自己治癒力を低下させるさまざまな原因が潜んでいます。だからこそ、対症療法ではなく根本原因にまで遡って治療を行うことが重要なのです。 本書では、全人的な治癒を…

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