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特定の人に財産に遺すには、相続以外の方法として「遺言による贈与(遺贈)」と「死因贈与」があります。この2つは「死をきっかけに財産がある人に移転する」という点では似ていますが、意味は大きく異なります。みていきましょう。

「死因贈与」のメリット

死因贈与のメリットは3つあります。

 

1つ目は相続人に自分の意思や要望を伝えられるという点です。契約なので、事前に贈与する相手にどんな財産を贈与したいのか、なぜ贈与したいと思うのかを伝えられます。また、死因贈与では負担付き死因贈与という形式を取ることもできます。

 

そのため、「私が死んだら財産をあげるから、生きている間は面倒を見てほしい」と要望を伝えることもできます。

 

2つ目は確実に財産の移転を実行できるという点です。贈与契約は当事者双方が「あげます」「もらいます」と合意していないと成立しません。つまり、受贈者が「もらうこと」を承諾していることが重要なのです。

 

事前にどんな財産を取得するのかをもらう側が知っているので、死後の財産の移転が実行される可能性が高くなります。

 

3つ目は遺言ほど形式に縛られない点です。遺言は書面で遺さなくてはなりませんし、民法に規定された形式に則らないと無効になります。

 

しかし死因贈与は形式が自由です。口頭でも成立します。万が一に備えて文書を作成するにしても、遺言のように法律で定められた形式はありません。贈与者の死後の検認も不要です。

「死因贈与」のデメリット

メリットがある一方、死因贈与には次の3つのデメリットがあります。

 

1つ目は形式によっては死後、トラブルになる可能性があるという点です。形式にとらわれないので口頭でも成立しますが、それだけだと相続開始後、贈与者の相続人との間で争いになるおそれがあります。また書面があったとしても、全部が印字されていると真正性が疑われるかもしれません。

 

面倒な事態を避けるなら、当事者の署名と日付は手書きにし、押印は実印で行う必要があります。

 

2つ目は撤回が簡単ではないことがあるという点です。死因贈与も遺言に準じた形式であるため、撤回することはできます。

 

ただしそれは「単に財産をあげるだけ」のときです。負担付き死因贈与のように「Aが死んだらBに財産をあげるけど、代わりにBはAの生活の面倒を見ること」といった条件がついているケースで、もしBが「生活の面倒をみる」という負担を履行していたら、特別な理由がない限りAは撤回できません。

 

3つ目は、移転する財産が不動産だと登記にかかるコストと手間が大きいという点です。死因贈与は受贈者の立場に関係なく「登録免許税2.0%、不動産取得税4.0%」がかかります。また義変更には相続人全員の同意が必要になります。

 

受贈者が推定相続人なら通常の相続か遺言による贈与の方が少ない負担で済むのです。

次ページ遺言と死因贈与…結局どちらを選ぶべきか?

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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