消費税増税がもたらした慢性デフレという災厄が日本経済を覆っています。GDPは萎縮して総税収は減り続け、財政収支は悪化し、社会保障財源どころでなくなりました。そこで再び消費税増税という失敗を繰り返しているのです。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

需要縮小では資本主義の力を引き出せない

再分配を可能にするのも、やはり経済のパイが大きくなるということです。GDPというパイの大きさがよくて横ばい、だんだんと小さくなるという日本経済の場合、再分配するためには誰かの部分を小さく削って別のグループに分けなければならない。

 

すると削られるグループの反発は強く、政治的に見て再分配は難しい。パイが年々大きくなっている場合は、大きくなる部分を再分配すれば済むので、政治的軋轢は小さくて済むでしょう。

 

日本が繰り返しているデフレ経済下の消費税増税の場合、増収分は社会保障財源に回すので満遍なく再分配されるという建前ですが、経済学的には極めて不合理です。なぜなら、消費税増税はより低い所得階層に、より高い負担をもたらすからです。

 

さらに、増税による需要圧縮効果で総需要が萎縮する結果、GDPが減り、税収全体が落ち込みます。すると再分配する財源がなくなります。

 

1997年度の消費税増税がもたらした慢性デフレという災厄がそれで、中長期的に見てGDPは萎縮して総税収は減り続け、財政収支は悪化し、社会保障財源どころでなくなった。そこで再び消費税増税というとんでもない失敗を繰り返しているのです。

 

経済のパイが大きくならないことを理由にして再分配をケチることは、貧困層を下支えする共同体としての国家の民力、いわゆる国力の低下に繫がっていきます。だから、経済はマクロとしての拡大がいかに大事かということです。

 

ミクロの単位でよく言われるのは、企業の努力が必要だ、経営者がしっかりしなきゃ―コーポレートガバナンスが重要、あるいはイノベーションを起こすのはベンチャーだとかいうことです。

 

しかし、イノベーションをもたらすベンチャーにしても「将来は状況がもっとよくなる」とか「もっとマーケットが広がって、こういうビジネスが可能になるぞ」という見通しがなければ、投資意欲は出てきません。将来の展望が広がって初めてベンチャー開発者の前頭葉が活性化するはずです。

 

逆にマーケットが縮小して「もうダメ。俺の代で終わりだ」。子供に「お前はどこかに勤めに出ろ」と言わざるを得ない場合は厳しい。なかには「いや、そんな簡単に諦めない。もっと頑張ってみます」という子供もいるでしょう。しかしマクロが縮小傾向にあると、廃業やむなしというトレンドが勝ってしまうと思います。

 

マクロ経済は土台です。やはりマクロがうまくいかない、つまりGDPで表わされる需要が縮小するようであれば、資本主義の活力を引き出せないことになります。
 

 

田村 秀男
産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

 

 

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    本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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