日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、遺言書にまつわるトラブルについて、相続を専門とする円満相続税理士法人の桑田悠子税理士が解説します。

父が残してくれた遺言書…そこに書いてあったのは?

そのように言った、父・元也さんは、2年後の春、旅立っていきました。葬儀などが終わり落ち着いたころ、兄妹に遺言書の存在を明かし、父の遺志を確認する日がきました。

 

遺言書

 

家と土地はお兄ちゃんに譲る

銀行にある預金は、3人で均等に分けること

 

平成●年5月吉日 高橋元也

 

一見すると長男である和也さんに有利にみえる遺言書。和美さんの顔が瞬時に曇りました。一方、和也さんは「父さん……」というと膝から崩れ落ちてしまいました。この遺言書ではまずいと悟ったのです。

 

「どうしたんだ、兄貴」と心配そうに声をかける次也さん。

 

そのときです。和美さんは違和感を口にします。

 

「ちょっと待って、このお兄ちゃんって、一也兄さんのこと? それとも次也兄さんのこと?」

 

確かに、お兄ちゃんとだけ書かれては、どちらなのか、明確ではありません。さらに和美さんは畳みかけます。

 

「5月吉日っていつのことよ。この遺言書、大丈夫?」

 

和美さん、何かを確信して不敵な笑みを浮かべました。結局、父・元也さんが残した遺言書は不備があり、遺産分割について、相続人である兄妹で話し合うことに。実家に住み続けたい長男・一也さんに、実家を売って現金化して分割したい和美さん。その間で右往左往する次也さん。結局、一也さんが実家を相続する代わりに、身銭をきって、和美さんが納得するだけのお金を渡すことに。

 

「父の遺志が分かる遺言書ではあったのですが……残念です」

 

相続、そして遺産分割を通して兄妹の溝はさらに深くなったといいます。

相続のプロからのアドバイス

お父様、遺言書をせっかく書いていたのに、有効でなかったため、ご兄弟でお話合いにより遺産を分ける必要が出てしまいました。

 

このようなケースは実はたくさんあります。お子様のことを考えて書いてくださった遺言でも、法的要件を満たしていないと、相続登記などもできず、有効ではありません。その場合には、遺産分割協議という、相続人同士での話し合いをしなければいけないのです。

 

そこで、相続人の配偶者や、個々の家庭の事情が絡まり合い、複雑化していくケースが多いのです。そのため、ぜひ相続を専門とする弁護士・司法書士・税理士などに相談のうえ、遺言書を作成してください

 

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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