父が残してくれた遺言書…そこに書いてあったのは?
そのように言った、父・元也さんは、2年後の春、旅立っていきました。葬儀などが終わり落ち着いたころ、兄妹に遺言書の存在を明かし、父の遺志を確認する日がきました。
遺言書
家と土地はお兄ちゃんに譲る
銀行にある預金は、3人で均等に分けること
平成●年5月吉日 高橋元也
一見すると長男である和也さんに有利にみえる遺言書。和美さんの顔が瞬時に曇りました。一方、和也さんは「父さん……」というと膝から崩れ落ちてしまいました。この遺言書ではまずいと悟ったのです。
「どうしたんだ、兄貴」と心配そうに声をかける次也さん。
そのときです。和美さんは違和感を口にします。
「ちょっと待って、このお兄ちゃんって、一也兄さんのこと? それとも次也兄さんのこと?」
確かに、お兄ちゃんとだけ書かれては、どちらなのか、明確ではありません。さらに和美さんは畳みかけます。
「5月吉日っていつのことよ。この遺言書、大丈夫?」
和美さん、何かを確信して不敵な笑みを浮かべました。結局、父・元也さんが残した遺言書は不備があり、遺産分割について、相続人である兄妹で話し合うことに。実家に住み続けたい長男・一也さんに、実家を売って現金化して分割したい和美さん。その間で右往左往する次也さん。結局、一也さんが実家を相続する代わりに、身銭をきって、和美さんが納得するだけのお金を渡すことに。
「父の遺志が分かる遺言書ではあったのですが……残念です」
相続、そして遺産分割を通して兄妹の溝はさらに深くなったといいます。
相続のプロからのアドバイス
お父様、遺言書をせっかく書いていたのに、有効でなかったため、ご兄弟でお話合いにより遺産を分ける必要が出てしまいました。
このようなケースは実はたくさんあります。お子様のことを考えて書いてくださった遺言でも、法的要件を満たしていないと、相続登記などもできず、有効ではありません。その場合には、遺産分割協議という、相続人同士での話し合いをしなければいけないのです。
そこで、相続人の配偶者や、個々の家庭の事情が絡まり合い、複雑化していくケースが多いのです。そのため、ぜひ相続を専門とする弁護士・司法書士・税理士などに相談のうえ、遺言書を作成してください
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