(※写真はイメージです/PIXTA)

いま現役で働いている人々は、将来どれだけの年金を受給できるのでしょうか。現時点で最もあり得るのは、受給額が今後ずるずると減っていき、30年後には夫婦2人で月13万円しかもらえなくなるというシナリオです。ゆとりある老後生活を迎えるには、どうすればよいのでしょうか? 森永卓郎氏の新刊『長生き地獄にならないための 老後のお金大全』(KADOKAWA)より、年金の繰り下げ受給・繰り上げ受給について解説します。

「住民税が非課税になる年金額」はいくら?

「住民税を非課税にするには、年金をどのくらいにすればいいんですか。」

 

森永先生「現在の平均的な厚生年金の受給額は175万円だから、控除額がこの金額を超えれば住民税を非課税にできるね。たとえば、単身者の場合は『公的年金等控除』は110万円、住民税の『基礎控除』が43万円、『社会保険料控除』が15万8000円で合計控除額が168万8000円だね。年金額よりも控除額が低いので、住民税非課税ではなくなってしまう。」

 

「うちは夫婦2人ですけど。」

 

森永先生「扶養配偶者がいる場合は、扶養控除の33万円が加わるので、控除額の合計が201万8000円になって、年金額の175万円を超えるので住民税は非課税だね。」

 

「それはうれしいな。」

 

森永先生「ただ、住民税が非課税となる年金額は、住所地の自治体によって微妙に異なるんだ。たとえば、東京23区内の場合、単身者なら155万円以下、扶養配偶者がいる場合は211万円以下ならOKだね。」

 

出所:森永卓郎著『長生き地獄にならないための 老後のお金大全』(KADOKAWA)より
[図表3]年金と住民税の関係 出所:森永卓郎著『長生き地獄にならないための 老後のお金大全』(KADOKAWA)より

「老後の生活費」は平均でいくら?

老後に必要な生活費は、ライフスタイルによって大きく変わりますが、平均値を知っておくのもいいでしょう。総務省の「家計調査年報」には65歳以上の夫婦のみの無職世帯の収支が紹介されています。2020年はコロナ禍という特殊事情があったため、2019年のデータをチェックしてみましょう(図表4)。

 

出典:総務省「家計調査年報」(家計収支編)2019年
[図表4]高齢世帯の収支はどうなっている? 出典:総務省「家計調査年報」(家計収支編)2019年

 

収支は実収入が約24万円であるのに対し、支出が約27万円で毎月約3万円の赤字が発生していることがわかります。不足分は貯蓄などを取り崩して生活していることになります。

 

この状態が65歳から100歳まで続くとすると、35年で1260万円の貯蓄が必要になります。

 

■「ゆとりある老後生活」には平均「月36.1万円」必要

老後にゆとりある生活をするためには、どの程度の生活費が必要になるでしょうか。生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(令和元年度)によると、最低日常生活費は月額で平均22.1万円となっています(図表5)。さらに、ゆとりある老後生活を送るために必要な資金は、最低日常生活費に加えて平均14.0万円が必要だとしています(図表6)。「最低日常生活費」と「ゆとりのための上乗せ額」を合わせると、平均36.1万円が必要ということになります。

 

出典:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(令和元年度)
[図表5]最低日常生活費 出典:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(令和元年度)

 

出典:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(令和元年度)
[図表6]ゆとりのための上乗せ額 出典:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(令和元年度)

 

また、「ゆとりのための上乗せ額」の使い道として最も多いのが「旅行やレジャー」60.7%、続いて「趣味や教養」51.1%となっており(複数回答)、老後生活をアクティブに過ごしたいと考えている人が多いようです。

次ページ年金受給は「何歳から」が有利?

森永卓郎氏の著書『長生き地獄にならないための 老後のお金大全』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

長生き地獄にならないための 老後のお金大全

長生き地獄にならないための 老後のお金大全

森永 卓郎

KADOKAWA

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