相続の現場では、相続人同士の思いや欲求がぶつかってトラブルになるケースをよく目にします。しかし、相手がとの対話が成り立たず、身動きが取れない状態になることもあります。もっともダメージを少なく解決するには、どうしたらいいのでしょうか。不動産と相続を専門に取り扱う、山村暢彦弁護士が解説します。
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末っ子の切実な願いは、兄たちに踏みつけられ…
相続の現場では、家族同士の円満なコミュニケーションを経て、スムーズな資産承継が実現するケースがある一方、これまで鬱積してきた家族間の不平不満、あるいは欲求が、相続をきっかけに噴出し、収拾がつかなくなるケースもあります。
弁護士のところに持ち込まれる「相続トラブル案件」は、円満な着地を模索するものより、決別覚悟のものが圧倒的に多いです。
しかし、トラブルにおいては、対立している人同士が、同様に怒りを募らせているとは限らず、両者間に相当な温度差があり、話し合いがかみ合わないケースもあります。
ある男性のケースです。男ばかりの3人きょうだいの末っ子で、兄たちからはいつまでも軽くあしらわれ、まともに話を聞いてもらうこともありませんでした。
父親は遺言書を残さずに亡くなりましたが、土地持ちの二男だった父親には、それなりの資産がありました。しかし、相続はすべて長兄と次兄で話を進め、男性はほとんど相続放棄を迫られるようなかたちになりました。
いつもなら兄たちのあしらいを甘んじて受け入れるところですが、今回はどうしてもそれができない事情がありました。
この男性の妻はがんを患っており、最後の望みをかけるため、先進医療を受ける治療費としてお金が必要だったのです。しかし、兄たちにそれを必死に訴え食い下がっても、まともに話も聞かず、取り合ってもらえません。そうこうしているうちに妻の容体は悪化し、亡くなってしまいました。
妻が亡くなった以上、高額な医療費は必要ありません。しかし、長兄の「親父の遺産、無駄にならなくてよかったじゃん」という一言で、男性は我慢の限界を超えました。男性はいま、兄たちと遺産分割を巡って係争中です。
弁護士法人 山村法律事務所
代表弁護士
実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産・相続トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。
数年前より「不動産に強い」との評判から、「不動産相続」業務が急増している。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社から、複雑な相続業務の依頼が多い。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。
相続開始直後や、事前の相続対策の相談も増えており、「できる限り揉めずに、早期に解決する」ことを信条とする。また、相続税に強い税理士、民事信託に強い司法書士、裁判所鑑定をこなす不動産鑑定士等の専門家とも連携し、弁護士の枠内だけにとどまらない解決策、予防策を提案できる。
クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続関連のトラブルについて、解決策を自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。
現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数6名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。
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神奈川県弁護士会 所属
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