※画像はイメージです/PIXTA

亡くなった人の借金を負担しないで遺産相続を済ませるには、相続放棄をすることが一般的です。しかし、もう一つ限定承認という方法もあります。遺産相続の方法の一つである限定承認の手続きと税務上の注意点についてみていきましょう。

譲渡所得の準確定申告が必要な場合も

限定承認をするかどうかを検討するときは、譲渡所得に対する税金にも注意が必要です。限定承認をすると、税制上は亡くなった被相続人から相続人に財産を売却したことになり、譲渡所得(みなし譲渡所得)に所得税が課税されます。遺産に土地や株式など値上がりするものがあれば、実際に売却していなくても含み益に税金がかかります。

 

なお、相続人が遺産を相続してのちに売却することになった場合は、売却益計算のための取得価額は相続時の時価になります。もともとの取得価額から売却益を計算すると、限定承認をしたときの含み益の部分が二重課税になってしまうからです。

 

被相続人は自分で所得税を申告することはできませんが、申告は免除されません。被相続人の死亡から4か月以内に相続人が準確定申告することになります。

 

 

みなし譲渡所得への課税で発生した所得税は被相続人の債務になります。借金と所得税を含めた債務が遺産より多い場合は、相続人は遺産を超える部分を引き継がなくてよいため、納税は免除されます。

 

一方、遺産より債務が少なく遺産が余る場合は、所得税を納めなければなりません。単純承認ではみなし譲渡所得への課税はないため、限定承認をすると所得税の分だけ損をすることになってしまいます。

 

 

限定承認をする場合の相続税
限定承認をする場合では、たとえ遺産が余ったとしても相続税が課税されることはあまりありません。相続税には3,000万円以上の基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数)があり、遺産が基礎控除額を上回るほどにはならないからです(多額の遺産が余るのであれば通常は単純承認をして限定承認は行いません)。

 

ただし、死亡保険金を受け取った場合は注意が必要です。死亡保険金には相続税がかかりますが、借金と相殺することはできません。非課税限度額(500万円×相続人の数)を超える部分について相続税の申告と納税が必要になります。

限定承認が必要な場合は専門家に相談しましょう

限定承認は、手続きが複雑になるほか、遺産額としてはほとんど手元に残らないため、あまり取られることがない手段です。しかし、不動産や事業用資産などどうしても相続したいものがあるときには限定承認で相続せざるを得ない場合もあります。

 

その際は、家庭裁判所等への申請や債権の整理など多数の手続きが必要となるので、相続に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。

 

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧