「ねえ、ところで運転はできる?」……3兄弟の長男であるYさんと結婚したAさんは、「長男の嫁」という理由で同居する義母にこき使われていました。その後、義母が亡くなりYさんの兄弟が実家に集結。相続についての話し合いが始まると、AさんはYさんの兄弟から「非情なひと言」を浴びせられるのでした。永田町司法書士事務所の加陽麻里布氏が、長男の嫁に起きた悲劇をとおして、相続トラブルを避けるための防止策と対応策を解説します。

未然にふせぐことは難しいが…「対策」は可能

本事例の問題点

姑の相続財産について、嫁に相続権がないこと(民法887、889条)。

 

防止策

嫁に一定の財産を贈与する旨の遺言書を姑に遺してもらうのが一番良い方法ですが、本事例のような場合には難しいでしょう。

 

または、負担付死因贈与契約を姑との間で結ぶという方法もありますが、契約になれていない日本社会の場合にはこちらの方法も難しそうです。

 

対応策

本事例のように、夫の母(父)親の世話を嫁がずっとしてきた場合、これまでは、(法律上)その苦労が報われることはありませんでした。

 

しかし、民法は改正により相続人でない者の貢献を考慮するため、「特別の寄与」の制度をもうけて、相続人に対し寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)を請求できる制度を設けました(民法1050条)。

 

これにより、亡くなった姑の療養看護に努めてきた嫁が特別寄与者と認められれば、寄与に応じた金銭を相続人に対し、請求することができます。

 

特別寄与料を請求するためには、以下のような要件があります。

 

①被相続人の※親族(相続人、相続の放棄をした者及び相続欠格事由に該当し、又は廃除によってその相続権を失った者を除く)であること。
※親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族をいいます(民法725条)。

 

②①に該当する者が被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと

 

③②により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたこと。


本事例において、トラブルを未然に防ぐことは難しいですが、こうした対応策を知っておけば、いざというときの備えになります。「特別の寄与」について、自分の場合はどうなんだろう……と悩んだときは、一度専門家に相談されることをおすすめします。

 

<<<類似ケースについて動画で解説(再生分数6:06)>>>

 

 

加陽 麻里布

永田町司法書士事務所

代表司法書士
 

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本記事は、GGO編集部あてに届いた事例をもとに、永田町司法書士事務所の加陽麻里布氏が解説したものです。

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