(※画像はイメージです/PIXTA)

本記事は、西村あさひ法律事務所が発行する『ロボット/AIニューズレター(2022/4/15号)』を転載したものです。※本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所または当事務所のクライアントの見解ではありません。

(6)不正競争防止法

不正競争防止法は、他人の商品等表示にフリーライドする行為の、①周知表示混同惹起行為、②著名表示冒用行為、③商品形態模倣行為を不正競争行為として禁止しています。

 

(i)周知表示混同惹起行為

 

周知である商品表示等については、「混同惹起行為」が禁止されています(不正競争防止法第2条1項1号)。

 

商品等表示とは、ある事業者の商品・営業と他の事業者の商品・営業を識別する表示のことをいいます。商品のデザインは基本的に商品の出所を表示するものではありませんが、デザインが同種の商品と識別できる独自の特徴を有し、それが長期間独占的に使用されるか短期間でも強力に宣伝広告されれば自他商品識別機能を持つことがあるとされています※4

 

※4 東京地判平成9年3月21日判時1607号94頁[藤村美術織物Ⅱ事件]

 

「混同惹起行為」とは、周知な商品等表示との出所の混同が生じるような行為のことをいいます。混同のおそれの判断では、商品等表示の識別力の高さのほか、商品の性質、需要者の範囲、取引形態等が考慮されます。メタバースでは、自社アイテムをメタバースで販売していない限り、出所の混同は生じないのではないかという議論があります。また、商品表示等が「周知」であることが必要であり、これを裁判で立証するのはそれなりの負担があります。

 

(ii)著名表示冒用行為

 

著名商品等表示については、「著名表示冒用行為」が禁止されています(不正競争防止法第2条1項2号)。

 

「著名」とは、全国レベルで知られていることを意味します。そのため、著名」の要件のハードルはかなり高いと言えます。著名表示冒用行為については、周知表示混同惹起行為と異なり、混同を生じさせることは要件となっていません。

 

(iii)商品形態模倣行為

 

商品形態模倣行為とは、いわゆるデッドコピーをすることであり、模倣した商品の譲渡、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為が禁止されています(不正競争防止法第2条1項3号)。

 

ここでの模倣とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことを意味します(同法2条5項)。リアルの商品とバーチャルの商品の間に「実質的に同一の形態」と言えるかについては議論があるところです。

 

また、禁止される行為は、「譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為」とされており、メタバースにおいて、ユーザが譲渡をせずに単に自己使用しているだけの場合には、この禁止行為にあたらないことになります。

 

さらに、商品形態模倣行為が禁止される期間は、オリジナル商品の国内での販売開始から3年が経過するまでとされており(同法19条1項5号イ)、時間的制限があります。加えて、物理的制約のないメタバースでは「国内」での販売にあたるかという問題もあります。

 

(7)UGC

UGCとは「User Generated Contents」の略称で、ユーザが作成するコンテンツのことです。メタバースでは、ユーザが建物、アバター、ゲームなどを作成することができるものも多く、その魅力の一つとなっています。メタバースにおいて、UGCを作成できるようにした場合には、その知的財産をどのように取扱うかが問題となります※5

 

※5 メタバースにおけるUGCについては、プラットフォーム上で作成するものと、ユーザがプラットフォーム外で作成してプラットフォームに持ち込むものがある。前者については、UGCの知的財産をプラットフォームとユーザのいずれに帰属させるのかが特に問題となります。

 

UGCについては、

 

①UGCの知的財産をユーザに帰属させるか否か。

 

②ユーザによる元コンテンツの改変をどこまで認めるか。認める場合、ユーザの権利(著作権等)はどこまで認めるか。

 

③ユーザがアイテムを第三者に譲渡することを認めるか。認める場合、譲渡を認める第三者の範囲をどうするか。ライセンス契約の効力をどのように第三者に及ぼすか。

 

④ユーザによる営利利用(収益化)を認めるか。

 

が問題となります。

 

①のUGCの知的財産権の帰属は、メタバースの運営者にとっても、ユーザにとっても重要な事項となります。ユーザに知的財産を帰属させない場合には、ユーザの創作意欲を減退させることや、ユーザは自らの知的財産を奪うプラットフォームの利用を避けるようになることが想定されます。また、上記②~④もユーザの創作意欲や参加意欲を高めたり、口コミなどのマーケティング効果を上げるために重要な要素となります。

 

②の著作権があるコンテンツを改変する行為については、従来から同人誌やコスプレにおいても問題となっています。多くの場合には著作権侵害行為にあたるものの、許容されているケースもあり、一定の文化の形成やファンの拡大に寄与しています。しかし、そのようなあいまいな状況はユーザに対する委縮効果を生じるさせるおそれがあり、何らかのルール形成が望まれます。

 

UGCの知的財産の取り扱いについては、プラットフォームとユーザ間の問題だけではなく、ユーザ間の取引でも問題となりますが、その取引態様は多様であるため、今後の検討課題と言えます。

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福岡真之介

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