人口が減少しているはずの地方郊外で、次々に賃貸アパートが建てられています。相続対策で乱立状態ですが、今、アパートが満室だったとして、10年後も同じように満室だとは限りません。その後は「空室」の不安をずっと抱えることになります。24,000戸以上を管理する不動産会社の代表の重吉勉氏が著書『不動産投資が気になったらはじめに読む本』(金風舎)で明らかにします。

相続対策の地方アパートが負動産化する

■不動産投資の原則からはずれた地方アパートの危険性

 

ところが、人口が減少しているはずの地方郊外で、次々に賃貸アパートが建てられています。賃貸住宅の着工数のデータを見ると、この10年間で約360万戸の賃貸住宅が建てられています。

 

大きな要因は相続対策です。現金をそのまま相続した場合、相続税額を計算するためのベースとなる相続税評価額は、額面金額の100%となります。一方、現金を投資用の不動産に組み替えた場合、評価額はおよそ3分の1から4分の1程度に圧縮することができます。この相続税評価額の圧縮効果をねらって、賃貸アパートがどんどん建てられているのです。このように、賃貸需要と賃貸アパートの供給が釣り合っていないエリアに投資してしまうと、その後は「空室」の不安をずっと抱えることになります。

 

2014年の時点で、全国1741自治体のうち、過半数の896の自治体が「消滅可能性都市」だと政府の日本創生会議で報告されています。消滅可能性都市とは、若年女性(20〜39歳)人口が、10年から40年までの間に半分以下になることをいいます。

 

人口の減少スピードは地方では平均を上回るスピードで加速しているのです。今、アパートが満室だったとして、10年後も同じように満室だとは限りません。人口が減少していくのであれば、それに伴って空室が増えるのはあたり前の話です。

 

実際、総務省の調査によれは、2018年時点での全国の賃貸住宅(1戸建含む)の空室率は18.5%にもなり、ほぼ5件に1件が空室の状況です。

 

地方や郊外では土木・建築業を中心に人手不足が続いているので、こうした需要をうまく取り込めれば、安定したアパート経営ができると思われるかもしれません。しかし、リーマンショック後、工場で働く人たちで満室だったアパートで、工場の閉鎖とともに、空室が一気に続出してしまったことを思い出してください。

 

賃貸需要が工場や大学のような特定の門に限られているような場合、安定した賃貸経営は難しくなります。実際、コロナ禍で多くの大学がリモート授業になったことで、大学生向けのアパートの空室が一向に埋まらない、という話も聞こえてきます。

 

こうした状況下で、利回りが高いから、価格が安いからという目先の数字だけで、賃貸需要のない土地に不動産を買っても、将来の空室は明らかです。大切なのは「今この瞬間」の賃貸需要ではなく、10年後20年後といった将来にわたる賃貸需要の見極めです。

 

重吉 勉
株式会社日本財託 代表取締役社長

 

 

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本連載は重吉勉氏の著書『不動産投資が気になったらはじめに読む本』(金風舎)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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