(写真はイメージです/PIXTA)

お金を巡る相続では、事前に対策をしていない場合、いくら仲の良かった親族であっても争いに発展するケースは少なくありません。今回、アイリス仙台法律事務所の関野純弁護士が、ある兄弟に起きた「争族」を紹介するとともに、争いを生まないための対応策について解説します。

判決確定後も往生際の悪い長男…口座を差し押さえ

判決が確定した後も、長男は支払いに応じませんでした。長男は既に退職していたため、弁護士は、長男の財産調査を行いました。

 

調査の結果、長男が某金融機関に口座を有していることを突き止めることができましたので、速やかに、財産を差し押さえ、全額を回収することができました。

 

本事案の解説

本件の教訓として、兄弟のひとりに両親の通帳の管理を任せることは避けるべきだ、と思われた方は多いと思いますが、本件はかなり稀なケースだと思います。

 

本件の長男と同じ立場で、親と同居したり、親の近くに住んだりしている兄弟は、自分は親身に親の面倒を見ているのに、相続になった途端に、兄弟で平等に分配する、ということにやりきれなさを感じる方が多くいらっしゃると思います(なお、本件の長男が何を考えて、親の財産から無断で引き出しを行ったのか、その動機は最後まで明かされませんでした)。

 

親への貢献を評価するための「寄与分」という制度はありますが、「寄与分」が認められるハードルは高く、複数の要件をクリアしなければ簡単には認められません。

 

こうした紛争を未然に防ぐために、おすすめしたいのが「民事信託(家族信託)」制度です。

 

民事信託は、財産管理をお願いする親と、託される子供とのあいだで、「信託契約」を結んだうえで、便宜親の財産の一部を子供名義に移し、子供は親に財産状況を定期的に報告しながら、親のために財産を活用する制度です。

 

契約内容を自由に設定することができるため、子供に財産管理業務の報酬を支払うこともできます。また、親の財産管理の範囲や内容が信託契約で明確にすることができるので、問題が起こったときの責任の所在で争う必要がなくなります。

 

利害関係者が複数いらっしゃるご家庭では、いつ紛争が表面化してもおかしくはありません。これを防ぐには、遺言書などで親の意思を明らかにしておくほか、親の介護や財産管理を兄弟のひとりが無償で行う、という考えも変えていく必要があると感じます。

 

穏やかな老後、争いのない相続は誰もが望むものです。家族の考え方や行動をコントロールすることはできませんが、紛争を防ぐ手立てはあります。これから老後を迎えられる方には、ご自身の行動で家族の平和を守ることができる場合がある、ということを、心に留めておいていただきたいと願うばかりです。

 

 

関野 純

アイリス法律事務所 弁護士

 

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