(※写真はイメージです/PIXTA)

小麦を筆頭に、特定の食材を食べた後、しばらくしてから身体がだるくなる、頭痛や下痢、腹痛などの症状が起こる…そんな「遅延型食物アレルギー」や「隠れ食物アレルギー」と呼ばれる病態に悩む人が増えています。特定の食材で体調を崩す人はそれらを一切食べてはいけないのでしょうか? また、特に体調を崩すことのない健康な人であっても、これらの食材を避けたほうがいいのでしょうか。※本連載は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師による書き下ろしです。今回は藤井祐介氏と共同執筆しています。

■食事制限はあくまで「対症療法」であり、根本解決策ではない

当院を受診された患者さんからこんなお話を伺うことがありました。

 

10代の患者さんで、慢性疲労症状がありました。当院に来られる前にかかっていたクリニックで、遅延型フードアレルギー検査を行い、乳製品と小麦に強い反応が出ていたということです。主治医の指導で、乳製品と小麦を除去したところ、たちまち体調が回復したのです。ご両親もとても喜ばれたのは良かったのですが、「いつまで乳製品や小麦を除去しないといけないのですか」と尋ねたところ、主治医から「一生です。一生、乳製品・小麦は食べてはいけません」と言われたということです。そして、驚かれたご両親がネットで検索し、当院を受診してくださいました。

 

当院では、検査結果を見て一律に食事制限をすることは行いません。もちろん、明らかに体調が悪くなる場合は別ですが、根本的な原因である腸管ディスバイオーシスを修復することに重点を置きます。そして、治療により、腸内環境が整ってくることで「遅延型フードアレルギー」の症状は改善します。

 

実際に、【症例】をご覧ください。

 

慢性疲労の20代の男性です。治療前は、ほとんどすべての食材にかなり強い反応が見られました。しかし、最初は食べ物が原因で倦怠感が起こるということは自覚されていませんでした。反応のある食材を食べられないということになるとこの男性はまったく何も食べることができません。しかし、食事制限を行うことなく、腸内環境を整えることで症状は改善してきました。【症例】の「治療後」は、7ヵ月後に再検査したフードアレルギー検査です。食事制限を行わなくても、「広義のリーキーガット」に対しての根本的治療を行うことで、検査所見も改善したという一例です。

 

【症例】食事制限を行わずに改善した遅延型フードアレルギーの例

 

特定の食材で体調が悪くなることが明らかなときには、一時的に制限する場合もありますが、それはあくまでも対症療法です。食事制限をして体調が良くなったからといっても、腸内環境はまったく整っていません。症状が良くなって食材を食べ始めるとまた悪化するのは、根本的に何も良くなっていないからです。

 

食事制限はあくまで補助的な治療であり、根本的に腸内環境を整え、マクロバイオータを回復させれば、食材を食べても不調が起こらなくなってくるのです。このことは何度強調しても強調しすぎるということはありません。

 

では、特に体調が悪くもない健康な人ではどうなのでしょうか? 次のそのことを考えてみましょう。

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自己治癒力を高める医療 実践編

自己治癒力を高める医療 実践編

小西 康弘

創元社

病気や症状は突然現れるのではなく、それまでの過程に、自己治癒力を低下させるさまざまな原因が潜んでいます。だからこそ、対症療法ではなく根本原因にまで遡って治療を行うことが重要なのです。 本書では、全人的な治癒を…

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