(画像はイメージです/PIXTA)

父が兄妹に遺した財産は、6000万円の金融資産、1億円の自宅、2億円の貸しマンション。兄は、金融資産を2分割にしたうえ、自分は貸しマンション、妹は自宅を相続することを主張しますが、不公平さに納得できない妹と裁判に。調停の最中ですが、妹は遺産の金融資産を相続税の納税資金に充てたいと考えています。法的に可能なのでしょうか。高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

預金の法定相続分の1/3は、協議前でも引き出せるが…

遺産が数億円といった高額の相続の場合、心配なのは相続税の支払いです。

 

相続税の支払いは、被相続人がなくなってから10ヵ月以内と決まっています。しかし、相続人間で、遺産について相続争いが生じた場合、遺産分割協議を10ヵ月以内で成立させるのは、なかなか困難です。

 

相続税の申告までに遺産分割協議が成立していない場合は、遺産分割協議未了として相続税の申告をすればいいのですが、法定相続分で相続をしたとして相続税の申告をして納税をする必要があります。

 

相続税は「遺産の何十%」と決められており、遺産の額よりは必ず少なくなるので遺産を換金できれば支払うことは可能です。

 

しかし、相続争いをしていると、その間は遺産を換金できません。したがって、相続人が相続税を支払えるだけお金を持っていない場合、相続税の支払いができないという問題が生じてしまいます。

 

平成28年の最高裁判決以前は、預金は金銭債権なので、相続が発生すると相続人に当然法定相続分に従って分割されるというのが最高裁判決の結論でした。

 

したがって、各相続人は遺産分割協議前に自分の相続分に応じて預金を下ろせました。

 

しかし、最高裁平成28年12月19日判決により、預金は、遺産分割協議が成立しないと下ろせないこととなりましたので、今は、相続人は自分の法定相続分であっても遺産分割協議まで下ろせません。

 

そこで、預金を全部または法定相続分を下ろせるとしている選択肢①②は誤りとなります。

 

ただし、平成28年の最高裁判決を受けて、まったく預金を下ろせないとすると、お金が必要な相続人が困ることもあることから、令和元年の改正相続法施行により、預金の法定相続分の3分の1は、各相続人は遺産分割協議成立前でも下ろせることとなりました。これを「遺産分割前の預貯金の払戻制度」といいます。

 

本件では、花子さんの法定相続分は2分の1で、その3分の1は下ろせることとなりますので、6分の1を花子さんは下ろせることとなります。

 

本件の預金は3000万円なので、6分の1である500万円下ろせることになるように思われます。

 

しかし法律では、遺産を銀行から下ろせるのは「1つの金融機関あたり150万円が上限」とされているのです。

 

したがって、太一さんの預金が複数の金融機関に分散されて預金されていれば、500万円を下ろせる可能性はありますが、1つの銀行にまとめて預金されている場合は、150万円までしか下ろせません。

 

したがって、選択肢④は誤りとなります。

 

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