日本では1990年代後半から25年間も慢性デフレが続いていますが、それが放置されたままになっています。経済成長をさせることが、政治家の最大の使命と言えます。経済を成長させられない政権は失格です。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

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25年間、慢性デフレが続いている理由

日本の場合、こういう状態が本当に起こり得るのでしょうか。理論的にというか、想定上は完全否定することはできませんが、現実にはあり得ません。よく引き合いに出されるのは2008年9月のリーマン・ショック後に起きたユーロ危機の際、ユーロ圏のギリシャ、スペイン、イタリアなどのユーロ建ての国債の急落です。

 

とくにギリシャ国債は文字通りの暴落で、売り一色のパニックになりました。そのとき、日本は民主党政権で、当時の菅直人総理は「日本はギリシャみたいになる」と大慌てでした。日本のメディアの大半が菅氏と同じ感覚で報道していました。これは経済や金融への無知ぶりをさらけ出しただけで、じつにみっともなかった。

 

日本と、ギリシャやその他欧州諸国とは状況が決定的に違います。なぜなら、日本の国債の90%強は民間銀行を中心とする国内の機関投資家が保有しているのに対し、ギリシャなど欧州では外国の投資家が国債保有の大半を占めるからです。外国の投資家は市場不安が起きるとただちに売りに出るので、国債は暴落しやすいのです。

 

三菱UFJ銀行もみずほ銀行も、日本生命も、大手金融機関は皆大量の国債を保有しています。これを投げ売りする、つまり自分で自分の首を絞めるようなことをするのでしょうか。それに、日銀はいくらでもお金を刷って民間が売りに出した国債を買い支えることができる。平たく言うと、自国通貨建ての国債は、中央銀行がしっかりと買い支えられるので暴落しない。仮に日銀が国債買いをボイコットすれば、国家経済崩壊を招くので、中央銀行の資格はありません。

 

もっとも、中央銀行がカネを刷って国債を買う量的緩和は実体経済がデフレ圧力を受けている場合に限定されます。物価が継続的に上昇する正常な経済の場合、政府が国債を大量発行して需要を拡大させる財政政策をとれば、インフレ率を適正水準以上に押し上げるので、そもそもありえない。

 

一方、デフレ経済の場合、モノやサービスの消費や設備投資にお金が向かいません。余ったお金が金融市場に流れますから、国債など市場金利が超低水準で推移します。そこで政府が国債を発行して財政出動し、景気をてこ入れするのは理に適っています。

 

それでも大規模な国債発行に踏み切ると、市場で消化し切れない不安が生じ、国債金利が跳ね上がりかねません。そこで中央銀行が市場で流通する国債を買い上げるのです。

 

日本の場合はとくに、1990年代後半から25年間も慢性デフレが続いています。脱デフレのためには、かなり思い切った財政出動と日銀の国債買いという量的緩和政策を組み合わせるべきなのです。デフレ局面から完全に抜け出すまでは、この両輪を回し続けることが理に適っています。

 

まとめると、デフレ圧力に苛まれている状況下での国債大量発行のそもそもの目的は、金融市場からお金を吸い上げて実体経済に回して経済を成長軌道に乗せ、デフレ不況から脱して本来あるべき姿に回帰させるということです。

 

国債が大量に発行されたから、もう大変だ、増税をして国債償還をしないといけない、日銀も債務超過になるぞ、というようなことばかり言って、政府は何もしなくていいというのは、デフレ容認の考え方です。

 

いまの財務省は「国債は借金だ」ということについて、一般の人が「借金」という言葉に対して持つマインド、つまり「借金はよくない」という感覚をうまく利用しているとしか思えません。デフレで民間需要が不足しているのに「借金はやめろ。貯蓄をしろ。無駄遣いするな」と。こんなことをやっていたら、経済は伸びない、デフレ不況が続くに決まっています。

 

資本主義経済というのは、先行投資、つまり将来に向けて投資することで活力が生まれるのですが、そのためには借金が不可欠であり、金融市場と金融機関が整備されているのです。

 

民間が動かない重要分野に、政府が民間であり余る資金を国債発行で吸い上げて投資するのは当然のことです。民間のみならず政府が借金に怯えていれば、国力が衰退する一方になります。

 

あとで詳しく述べますが、財務省とそれに追随する御用メディア、政治家は家計と国家を混同して、借金はダメだという論理を世論に刷り込み、経済を低迷させるのです。これもまた経済への恐るべき無知の仕業です。

 

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    本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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