電子カルテは便利な反面、サーバーダウンやウイルス感染など、システム面でのトラブルがしばしば発生すると、株式会社アリオンシステム代表取締役社長の山本篤憲氏はいいます。業務効率化のために電子カルテを取り入れている病院の事例から、医療現場における「システムトラブル」の恐怖をみていきましょう。

データを人質に身代金を要求されるケースも…

ケース3.ウイルス感染による悲劇

トラブルは、オンプレミス型電子カルテ導入からわずか2週間後に起こりました。突然電子カルテシステムにログインできなくなり、なんとかベンダー担当者がシステム復帰させたところ、「ウイルス感染」「データの暗号を解除するために身代金をよこせ」というメッセージが表示されました。

 

後日行われた調査では、このランサムウェアと呼ばれるウイルスに同一の院内ネットワークに属する2部門・複数サーバーが感染していたこと、そしてこのウイルスは外部ネットワークと電子カルテ管理端末を経由して、病院内に侵入した可能性が高いことが報告されています。

 

感染経路の詳細は不明のままですが、一般的にランサムウェアはスパムメールや改ざんされたサイトからの誘導に乗って不正サイトにアクセスしてしまうことから感染するとされています。

 

感染後のルートはこの病院で起こったとおり、データファイルの暗号化、その解除条件として身代金を要求されるというものです。

 

トラブル発覚後、いち早く紙カルテへの対応に切り替えて診察継続を図った対応はすばらしいものの、本来取っておくべきバックアップデータにも不備があり、結果として丸2日間にわたって同病院の電子カルテは使用できない状態になりました。

 

ここから分かることは、電子カルテにまつわるトラブル要因は必ずしもネットワーク由来のものではなく、ヒューマンエラーの可能性も大きい、ということです。

 

大手病院を中心に、オンプレミス型電子カルテの導入割合が多いこともあり、ここで取り上げた事例はすべてオンプレミス型電子カルテのものとなっています。

 

クラウド型電子カルテの普及が進めば、同様のトラブルがクラウド型電子カルテで起こり得る可能性は大いにあります。その点では過去の事例から学び、ベンダー側も最善の対策を試みる必要があるといえます。

 

 

山本 篤憲

株式会社アリオンシステム

代表取締役社長

 

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※本連載は、山本篤憲氏の著書『病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

山本 篤憲

幻冬舎メディアコンサルティング

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