診療報酬という仕組みにより、地域差を感じずに医療サービスを受けることができる日本。反対に、医療機関はサービスに自由な料金設定ができないことから、収益性を改善できず「赤字」に陥る病院も少なくありません。では、「赤字病院」と「黒字病院」にはどのような違いがあるのか、患者数の違いではない「現代だからこそ生じる差」について、株式会社アリオンシステム代表取締役社長の山本篤憲氏が解説します。

収益の最大化を達成しつつ、コストを一気に削減する

診療報酬が一定である以上、赤字解消を目指して収益を上げるためには集患力を高める必要があります。

 

その際、地域で連携する病院・クリニックからの紹介や逆紹介を増やすことは非常に重要です。外部との信頼関係を強め、「より多くの患者が足を運ぶようになる」病院に進化していかなければならないのです。

 

同時にコスト削減も実現していくわけですが、このとき最初に必要なのは、自院のパフォーマンスを素早く正確に分析することです。

 

例えばリアルタイムに病床や手術室の稼働率を割り出し、全国平均や他院と比較をしていくことで自院の強み・弱みが判明し、改善のメスの入れどころが見えてきます。

 

一方、診療報酬に基づく収益体制の健全化には効率化による選択と集中が必要ですが、収益の最大化を実現しようとすると必ず改定によって診療報酬体系にメスが入るというところが、病院ならではの難しさです。

 

だからといって「どうせ収益体制を調整しても、また変わるから」と諦めてしまうのではなく、より即応体制を整えるという方向に発想を変えていく必要があります。

 

各自治体の5年に1度見直される医療計画に対応し、2年に1回実施される診療報酬の改定に対応しながら、それでもなお収益の最大化をその都度志向していくのです。

 

このようなめまぐるしく制度が変わる環境で病院としての収益力を高めていくには、自院の強みと弱みをはっきりさせ、得意分野に経営資源を集中して効率化していくことが、長い目で見ても生き残るには効果的です。

 

そのような経営環境を構築するためにもインフラとして不可欠なのが電子カルテといえるでしょう。

 

電子カルテは、病院経営の「今」を如実に表して分析に役立てられると同時に、導入すること自体が大幅なコスト削減の達成につながる可能性があります。もちろん、診療報酬改定の度に発生する現場の煩雑な作業も一気に削減が可能です。

 

ただ、そんな電子カルテにはそれでもなお導入がなかなか進んでいないという実態もあります。しかし、時代の流れを考えれば電子カルテを導入しないという選択肢はあり得ません。なんとなく遠ざけていた電子カルテについて理解を深め、前向きにとらえていく必要があると考えています。

 

 

山本 篤憲

株式会社アリオンシステム

代表取締役社長

 

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    ※本連載は、山本篤憲氏の著書『病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

    病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

    山本 篤憲

    幻冬舎メディアコンサルティング

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