世界の方向性とは「一線を画す」中国のゼロコロナ政策
一方、テレビやネットの世界はポジティブ感で溢れている。「公務員やボランティアの人が寝る間も惜しんで検査や隔離などを手伝っている」という類のニュースが多い。そこには不自由な生活に苦しむ市民の姿や文句は登場しない。
国有企業で働く知人に、経済の停滞懸念などマイナス面の話を振ると、「キミは西方思想に毒されている。中国は最小の犠牲で大きな成果を得ているから問題ない!」といつも反論されてしまう。合言葉は常に前向きの「正能量(ポジティブエナジー)」だ。
吉林省長春や広東省深センに続き、上海市も3月下旬から事実上の都市封鎖(ロックダウン)に追い込まれている。封鎖は回避するとの当初方針を大きく転換した。
これに先立ち、3月中旬にはほぼ全市を対象とした大規模なPCRスクリーニング検査が行われ、感染者を徹底的にあぶり出した。冒頭の検査はこの"ローラー作戦"の一環である。
小区(居住区=日本のマンション区画や町内会のようなもの)ごとに住民が集められて集中検査。基本的に24時間間隔で2回行う。検査中や結果が出るまでのほぼ2日間は家から出られないプチロックダウン状態だ。
全員陰性であれば封鎖解除となるが、もし1人でも陽性者や異常反応が出たら全員再検査やロックダウン延長。これはもう究極の連帯責任である。自分のみならず他の住民が感染していないことを心から願ったのは、後にも先にもこの時だけだ。
オフィスや商業施設で感染者が発覚し、PCR検査のため建物が突然封鎖されることもある。たまたま内部にいると、事前通告もなくそのまま閉じ込められるリスクも高い。一寸先は闇ならぬプチ隔離。これはもう運任せだ。
できることといえば、万が一に備えて最低限の生活用品を常に持ち歩くこと。私は、予備のコンタクトレンズと歯ブラシ、スマホ用の携帯型充電バッテリーなどをいつもバッグのなかに忍ばせている。まるで毎日がキャンプ状態である。
世界が志向する共存策とは一線を画す中国のゼロコロナ政策。仕方ないが、緊張状態の生活はもうしばらく続きそうだ。
奥山 要一郎
東洋証券株式会社
上海駐在員事務所 所長
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