Uターンを考える人は地方暮らしで幼児のうちから必死に受験勉強などしなくても人並み以上の進学・就職ができたという成功体験をもっています。自分が育ったように、わが子にも祖父母が近くにいて、自然豊かな環境で育ってほしいという声を聞きます。Uターン転職をどう考えればいいでしょうか。キャリアコンサルタントの江口勝彦氏が解説します。

「地方に転職してのんびり」という憧れ

■将来の親の介護にも対応できる

 

Uターン転職の動機のなかには、将来の親の介護も含まれています。

 

親が体調を悪くして看病や介護が必要になってから慌てて転職・引っ越しをするよりも今のうちから親元で暮らしておけば、いつ何があっても安心です。本人が30代ならその親は60代くらいなのでまだ元気といえば元気ですが、健康の不安や将来の生活の心細さもだんだん出てくる年代です。

 

また、親が70代80代になると、子ども世代は40代50代で年齢的に転職も難しくなります。それなら若いうちに転職してしまったほうが、後々のキャリア構築を考えても有利だという判断です。

 

■ワークライフバランス実現への期待

 

都会で忙しく働いてきた人にとっては、地方に転職することで少しゆっくりできるのではないかという期待もあるようです。

 

都会は人も企業も集中しているので、どうしても競争社会になってしまいます。「同業他社に負けないように」「職場の同僚に負けないように」という思いが、本人の望む・望まないに関係なく心にあるはずです。そのため、残業や休日勤務が当たり前になっている人も多いのだと思います。

 

それに比べて、地方は時間の流れがゆっくりしているように見えます。車社会なので毎朝満員電車に詰め込まれるストレスもありません。企業も人も過密ではないのであくせくしておらず、マイペースに働けそうに思えます。

 

地方移住や田舎暮らしを提案する本などを見ると、古民家に住んでのんびり畑仕事をしたり、蕎麦打ちをやったり、休日は山登りに出かけたりと悠々自適な生活をしている人を紹介していることが多いので、そのイメージが強いのだと思います。

 

このイメージが現実に照らして必ず正しいとはいえないのですが、Uターン希望者が抱いている憧れの一つとして、故郷に帰ればそういう生活が待っているのではないかという期待感が間違いなくあると思います。

 

「今の働き方で定年まで続けられるとは思えない。もっと自分らしい働き方を探したい」「子どもも生まれたから、仕事だけでなく家族の時間も大切にしたい」という思いからUターン転職を考える人もいます。

 

■豊かな環境、伸び伸び子育て、両親のサポート……Uターン転職への夢は膨らむ

 

地方は子育てに適した環境があり、受験競争にもまれることなく大らかな育児ができます。また、通勤のストレスがなく、リフレッシュできる自然も都会より身近にあります。家族に何かあったときの対応も誰かの手を借りやすく、親と同居すれば家賃や生活費を節約することも可能です。また近居であっても子育てや生活面でずいぶん助けられます。

 

なにより、自分が生まれ育った故郷に帰る安心感があります。人間にも帰巣本能があるといわれているので、故郷を懐かしく感じ、生まれたところに帰りたいと思うのは自然なことです。

 

江口 勝彦
株式会社エンリージョン 代表取締役
キャリアコンサルタント

 

 

本連載は江口勝彦氏の著書『幸せのUターン転職』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋し、再編集したものです。

幸せのUターン転職

幸せのUターン転職

江口 勝彦

幻冬舎メディアコンサルティング

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