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その他注目点…家計の資金余剰は高止まり、海外勢の国債保有が預金取扱機関を上回る
昨年一年間の資金過不足を主要部門別にみると[図表10]、家計部門の資金余剰額が36兆円と過去最大であった前年(41兆円)からはやや縮小したものの、過去2番目の高水準を維持した。コロナ禍の長期化に伴って、消費が抑制されたことが余剰額を押し上げている。民間非金融法人の資金余剰額は収益改善などからやや拡大している。
一方、コロナ対策の財政出動が続いたことを受けて、政府部門の資金不足額は34兆円(前年47兆円)こそ下回ったものの、コロナ前の約3倍の水準にある。
12月末の民間非金融法人の借入金残高は9月末から4兆円増加、債務証券残高も5兆円増加した[図表11]。一方で、民間非金融法人の現預金残高は319兆円と、過去最高であった9月末(321兆円)から1兆円減少している。
なお、10~12月期の民間非金融法人による対外投資状況(フローベース)を確認すると、対外直接投資は2.2兆円と、7~9月期の2.9兆円からやや減少した[図表12]。依然としてコロナ禍前の5年平均(2015~19年・3.7兆円)をやや下回っている※。
※ 2019年1~3月期の対外直接投資額は10.6兆円と突出しているが、これは国内製薬大手による総額6兆円の大型海外M&A完了という特殊要因が影響したものと推測される。
12月末時点の国債(国庫短期証券を含む)残高は1220兆円で、9月末(1219兆円)からほぼ横ばいとなった。
主な経済主体の保有状況を見ると[図表13]、最大保有者である日銀の国債保有高は530兆円と9月末から8兆円減少し、全体に占めるシェアも43.4%(9月末は44.1%)と若干低下した。コロナ流行後に大量に買い入れた国庫短期証券が償還を迎えていることが背景にあり、長期国債の残高は引き続き増加している。
また、銀行など預金取扱機関の保有高は9月末比2兆円減の163兆円となり、全体に占めるシェアも13.4%(9月末は13.5%)と若干低下している。
一方、海外部門の保有高は9月末比11兆円増の175兆円となり、シェアも0.9%ポイント増の14.3%となった。残高、シェアともに過去最高を更新し、初めて預金取扱機関を上回った。
インフレ懸念やそれに伴う金融引き締めによって金利が上昇(債券価格が下落)するリスクが燻る米国債などを避け、金利上昇リスクの低い日本国債へ資金を振り向ける動きが続いたとみられる。
上野 剛志
ニッセイ基礎研究所
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