(※写真はイメージです/PIXTA)

東京・名古屋間をつなぐ「リニア中央新幹線」計画や、都心から約15km圏域を結ぶ「東京外かく環状道路」計画などの建設工事は、地下の深層部で進められています。これまでも公共事業が公道の地下で行われることは当然とされてきましたが、近年施行された「大深度法」では、私たちの生活環境にも少なからぬ影響が及びます。法律の概要のほか、工事現場上の不動産の価値評価等について見ていきます。

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    地下深くの公共事業で、市民生活を脅かす事故が…

     

    法施行からすでに20年余りが経過していますが、多くの一般市民は大深度法に護られた公共事業が水面下(地面下)で進行していることを知らずに過ごしてきました。そしてある日、密かに進んでいるはずの工事で、人々の注目を集める事故が発生します。

     

    ◆東京外かく環状道路 地表陥没事故

    2020年10月、多くの市民が穏やかに休息する日曜の昼下がりに事故は起きました。東京都調布市内の住宅前に突然、大きさ5m×2.5mの大きな穴が開いたのです。調査の結果、その原因は東京外かく環状道路の本線トンネル工事によるものとわかりました。

     

    ▼陥没発生の原因(工事発注元プレスリリースより)

     

    夜間の停止中に削った土と添加材が分離し、下部に土砂がたまり、土が締め固まってしまった。翌朝、カッターが回らなくなってしまった。回らなくなったカッターを回すため、特別な作業をおこなったときに、地山の土が過剰に入り込んでしまい、その後の掘進において、土を取り込みすぎた。シールドマシン上部にゆるみが発生。上方に煙突状に伝わり陥没・空洞が発生。

     

    工事担当者は、掘進停止中も土の締め固まりを生じさせないことと、取り込んだ土の量を丁寧に把握するよう心がけ、再発防止に努めるとしています。

     

    ◆リニア中央新幹線 トンネル工事死傷事故

    2021年10月の宵の口、岐阜県中津川市内の中央新幹線・瀬戸トンネル新設工事現場で、切羽の肌落ち(掘削最先端の岩石落下)等が発生し、トンネル内で作業をしていた作業員1名が死亡し、1名が重傷を負いました。

     

    岩石の落下は2度に渡って起こり、1度目の落下で死亡した作業員が転倒、それを救出しようとしたもう一人の作業員が2度目の落下に巻き込まれ負傷したものです。現場には死傷者2人を含め合計5人の作業員がいましたが、残りの3人にケガはありませんでした。

     

    ▼落下事故の原因(工事発注元プレスリリースより)

     

    露出した地山(掘削前の地盤)から浮石が肌落ち(岩石落下)しやすい発破直後の残薬(火薬の残り)有無点検中に起きたもの。作業員がずい道(トンネル)等の掘削等作業主任者からの指示がないなかで、立入禁止範囲に入ってズリ山(掘削した岩石の集積場)を登ったこと、立入禁止範囲に作業員が入ったにもかかわらず、切羽(掘削最先端)監視責任者による常時監視がなされていなかったこと。また、残薬有無点検の際の切羽監視責任者の配置や常時監視について具体的な指示や作業手順書への明確な記載がなされてなかったこと。

     

    工事担当者は、火薬残薬の確認など緊急を要する点検の必要があっても、作業主任者の指示があるまで作業員を立入禁止範囲内に立入らせないこと、やむを得ず作業員が立入禁止範囲に立ち入る場合は、切羽の浮石を十分に落とし、残薬付近を除き、吹付けコンクリートを施工するなどし、事故の再発防止に努めるとしています。

    大深度法についての「重要事項説明義務」はある?

     

    大深度法の対象となる地下空間は、地上の土地所有者が利用したくでも、容易に利用できる場所ではありません。そこに鉄道やライフラインが通されても土地所有者に直接的な不利益はないとされ、一般的な不動産評価にも地下にかかわる指標は取り入れられていません。

     

    しかし、それらの新設工事に伴う騒音や振動、建物が壊れたり地面が陥没する事故発生の可能性はあります。万が一、売買契約予定の土地が大深度法の認可を受けた公共工事の対象エリア内にある場合は、たとえ重要事項説明すべき法令上の制限に含まれていないとしても、仲介を行う不動産業者は、情報を把握できる範囲で説明を行う必要があると考えます。

     

    ちなみに、リニア中央新幹線のルート詳細図(縮尺1/1,000)はインターネット上で簡単に閲覧・ダウンロードすることができます。積極的に調べれば入手できない情報はありません。

     

    近年になり、大深度地下工事が原因となった住宅地の陥没事故や工事現場での死傷事故なども相次いでいることから、大深度法に関わる土地の売買取引を行う際は、最新情報をしっかりと把握したうえで契約に臨む必要があります。

     

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    ※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。

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