ロシア中央銀行は2月28日、政策金利を20%に引き上げる発表。ウクライナ侵攻による米欧の経済制裁で通貨ルーブルが急落、過去最安値を更新しました。さらにロシア国債も暴落しました。なぜ通貨が下がると金利があがり、国債が下がると利回りが上がるのでしょうか。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

債券価格を下げて発行するから金利が上がる

■国債と金利の関係

 

国債の金利が上がるのは、国家の信用がないからという話を聞くと思います。これを理解するには、長期的な視点と短期的な視点が必要です。

 

長期的に国債がどんどん売られるのは、ギリシャ危機のときのギリシャ国債がいい例になります。これはギリシャの政府、あるいは国そのものに信用がおけない、彼らは国債償還などできないに決まっているということで、ギリシャ国債を買う人がいない。売りだけあるという状況です。こうなると需要と供給の関係でギリシャ国債は暴落します。

 

取引の対象は元本の部分です。要するに元本が本来100円で、100円で取引されればトントンです。それで最初に発行されたときの元本が100円で、金利が2%だとします。この国債の相場というのは変動します。要するに100円だったものが50円にもなるし、200円にもなり得るわけです。ところが支払う利子は発行価格(元本)100円に対する2%(=2円)で同じです。

 

繰り返しますが、取引されるのは元本の価格です。だから、先のギリシャ国債のように元本価格が暴落していく、例えば100円だったものが50円になるとします。そうしたら元本50円で2円の金利を払わねばなりません。

 

それで金利が高くなるというわけです。即ち、最初の金利は2%ですが、元本が50円になると、金利は4%になる。

 

これが信用の少ない国債の金利が上がる仕組みです。国債の利回りはこういうカタチで計算されていくわけです。

 

恒常的に赤字国債というか、国債を発行しないと政府財政が回らない状況になると、先ほどの例で言うと、今度は元本を10円まで下げて、最初から高い金利20%の国債を発行せざるを得なくなる。20%の金利で借金してしまうと、もう首は回らないという話です。

 

国債も債券のひとつです。だから、信用度が低いと、その債券を買う人がいません。いたとしても少ない。その場合には債券の値段を下げて発行します。ただ、利子は変わりませんから、金利がドーンと上がるわけです。

 

だから、ギリシャ危機のときに、ギリシャの発行するユーロ債は金利が数十%になりました。同じユーロ債でも、ドイツが発行するユーロ債は金利が2%くらい。ギリシャが発行したら、金利は数十%。

 

そんなところに投資をする人はまずいないと思いますが、もしもその債券を買って自分のお金の使用権を手放すなら、よほどの対価がないと嫌だということになります。それで金利が上がるというわけです

 

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本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

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