現在、後継ぎがいない「後継者問題」に直面している会社がたくさんあります。特に、中小企業では、この後継者問題が深刻化していて、対策が必要となっています。どのような対策があるのでしょうか。株式会社M&Aナビ社長の瀧田雄介氏が著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)で解説します。

事業承継の課題を解消する手段のM&A

■相手④M&A

「M&A」は、他の企業や経営者に会社を売却する形で事業承継を行う手段です。

 

M&Aのメリットは、親族や役員・従業員といった限られた関係者以外から、広く承継相手を探せることです。買い手の母数が大きくなるので、特殊な状況や業績面で課題のある会社だとしても、引き継ぐ相手が見つかる可能性があります。

 

引き継いだ企業が事業をさらに発展させることもあり、オーナーではなくなっても心情的には満たされるはずです。また、会社を売却することで経営者が利益を得られるというのも、大きなメリットです。

 

一方、必ずしも希望の買い手が見つからなかったり、成立するまでに時間を要したり、交渉次第では想定した金額で会社が売却できなかったりすることがあります。

 

別の企業・経営者のもとに移ることで経営方針や労働条件が変わることもあり、その場合に懸念されるのは譲渡後に雇用が守られるかどうかです。条件の変更により従業員のクビが切られたり、離職が起きたりすることもあります。

 

会社の想いを引き継いでくれるのかという点は、非常に難しいところです。一定期間で買い手と信頼関係を築き交渉を進める必要があり、心理的な負担が伴います。

 

ただし、近年は後継者不在といった事業承継の課題を解消する手段としてM&Aは注目されているため、関心を持つ経営者が増えていることは事実です。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
【図2】「親族継承」と「社内継承」が同水準に! 瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

 

■事業承継の実態親族以外の承継が増えている

かつて、事業承継と言えば親族内が主流で、いまもそれは変わりません。しかしながら、「中小企業白書」(2021年)の調べによるとその割合は減少していて、2020年には社内承継と同水準になりました。

 

一方で社外承継やその他(M&Aなど)の割合はわずかながらも上昇しています。これまで主体とされていた親族への承継から、親族以外への承継へ状況は変わりつつあります。

 

経営者としても、大事に育ててきた会社を後継者不在などの理由で廃業することは忍びなく、なんとか存続する手段を探しています。そうしたなか、第三者承継が選択肢に入ってくるのは、当然の流れかもしれません。
 

 

瀧田雄介
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長

 

 

 

 

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    ※本連載は、瀧田雄介氏の著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より一部を抜粋・再編集したものです。

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    瀧田 雄介

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