(※写真はイメージです/PIXTA)

経営者の都合や、台風などのやむを得ない事情などにより、従業員がシフトより早く終業しなければならなくなった場合、賃金はいくら支払われるべきなのでしょうか? 医療機関を専門とする社労士が、医院を例にして解説します。医療系のみならず、他業種の場合にも参考になる内容です。

支払うべき「休業手当」はいくら?

労働基準法の休業手当では、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならないとされています。

 

平均賃金とは、基本的には算定すべき事由の発生した日以前3ヵ月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額です(図表1)。この場合の賃金とは、時間外労働割増賃金や各種手当などのすべての金額が含まれ、税金や保険料などを控除する前の金額になります。

 

[図表1]平均賃金の基本的な計算式

 

入社してから3ヵ月経過していない場合の平均賃金は、算定事由発生の日以前3ヵ月の期間をとって算定できないため、入社後の期間とその期間中の賃金総額で算定することになります(図表2)。

 

[図表2]入社3ヵ月未満の場合の平均賃金の計算式

 

また、賃金が日給制や時間給制や出来高払制及びその他請負制の場合には、算定方法が異なります。

 

算定期間中に支払われた賃金の総額をその期間中に実際に労働した日数で除した金額の100分の60の金額を最低保障額といいます(図表3)。

 

[図表3]最低保証額の計算式

 

賃金が日給制や時間給制や出来高払制及びその他請負制の場合は、最低保障額と基本的な計算式で算出された平均賃金と比べて大きい方が、平均賃金になります。

 

■ただし、実働分の賃金が「平均賃金の60%以上」なら休業手当は不要

診察を予定より早く終了して医院を閉めたことが、使用者の責に帰すべき事由に該当した場合は、労働基準法の休業手当に従って平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければなりません。

 

但し、その日の実働分の賃金が、平均賃金の60%以上であれば休業手当の支払いは不要です。また、平均賃金の60%に満たない場合は、その日の実働分の賃金の差額を支払う必要があります。

 

例えば、平均賃金が8,000円(時給換算1,000円)の従業員Aさんの場合の休業手当の最低額は、4,800円(8,000円×60%)になります(図表4)。

 

[図表4]従業員Aさんの場合

 

その日の実働が4時間だった場合、

4,800円(休業手当)–4,000円(実働分の賃金)=800円(差額分)

を休業手当として支払う必要があります。

 

その日の実働が5時間だった場合、

4,800円(休業手当)<5,000円(実働分の賃金)

となるため、休業手当の支払いは不要です。

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