指示を聞かない部下にイライラ。言っても聞かないなら放置するしかない…。このように考える上司は珍しくありませんが、実はこの対応こそ、チームマネジメントを危うくするリスクを秘めています。部下の放置は責任の放棄であり、無責任な上司の姿勢は組織全体に伝播します。しかしここで「対話」による相互理解が実現できると、組織は大きく前進します。ここでは「対話」が秘める力について見ていきます。

「他人を見ている自分=フィルター」

観察者の数だけ、人に対して見方があります。

 

たとえば有名な芸能人、ある人にとっては憧れの人、ある人にとっては嫌いな人、ある人にとってはライバル、ある人にとってはかけがえのない人……。見る人によって、相手に対する意味合いは違い、人の数だけ見方はたくさんあります。

 

このように同じ人に対しても、見る人が変われば考えることや感じる気持ちは違います。

 

観察者は他者に対して、独自のフィルターを通して見ていることに気がつかなくてはいけません。さらに言えば、どのようなフィルターを通して見ているのか理解していく姿勢が重要です。

 

この姿勢が整い出すと、相手をありのまま見られるようになります。

 

さて、話を上司と部下に戻しましょう。

 

上司が部下に対して、どのようなフィルターを持っているのか理解していく姿勢を持つと対話がスムーズに展開します。

 

また、自己との対話によって「なぜ?」と粘り強く質問し、自分の本心に向き合った経験がある人は、他者にも上手に質問できます。

 

なぜなら、自分に与えた粘り強さを他者にも発揮することができるからです。

 

「他人に対しての理解度は、自分自身に対する理解度に比例しますよ」というお話をすると、「他人のことはわかるのに、自分のことはよくわからない。なんていうことがありますよね? これについてはどうお考えですか?」と、質問されることがあります。

 

たしかに世間では、このように言われることが多いですよね。

 

しかし、よく観察してみると「相手のことを憶測で話しているだけで、本当のところはわかっていない」というケースが大半だと気がつきます。

 

世の中には人の考えや気持ちを予想して、上手に話せる人がいます。相手のことを真に理解しているのではなく、周囲の人に「たしかにそうかも~」と思わせるのが上手な人です。

 

このような話法を使いこなせるのは才能の一つです。うまく活用すれば、多くの人の助けになります。

 

しかし「理解しているとは言えない」と私は感じています。

 

「他人に対しての理解度は、自分自身に対する理解度に比例する」というのは、とてもシンプルな法則です。

 

この法則を知っていると「相手を理解したい」と思うなら、「自分自身を理解することに集中すればよい」とわかります。

 

私たちは一人ひとり、違う個性を持って生きています。

甘いものが好きな人もいれば、苦手な人もいる。

夏が好きな人もいれば、冬が好きな人もいる。

よく考えてから行動したい人もいれば、行動してから考えたい人もいる。

人の数だけ個性があり尊い存在。

 

そして、みんな同じでもあります。

禅問答のように聞こえるかもしれませんね。

しかし、これもまた事実。

損するのが嫌いなのはみんな同じです。

愛する人を失えば、悲しい気持ちになるのもみんな同じです。

その気持ちの乗り越え方は違うかもしれないけど、本質的には同じ。

人生の最後に死を迎えることもみんな同じです。

 

一人ひとり違い、そしてみんな同じ。

 

このことを意識しながら自分に対する理解を深めていけば、自ずと部下が何を考え、何を感じているのか自ずとわかってきます。

 

また、自分が部下に対して「もしかしてこう思っているのかも?」と感じたことを、サラッと質問できるようになります。すると、部下から「わかってもらえて嬉しいです!」と言ってもらえるようになっていきます。

 

「わかってもらえた」は安心感の源であり、信頼関係を築くベースでもあります。

 

部下のご機嫌をとるでもなく、無意味な迎合をするでもなく、本当の意味で「部下を理解する」意欲を大切にしましょう。

 

その想いは、自分をさらに理解していく助けになります。

 

 

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※本連載は、田口 淳之介氏の著書『リーダーのための対話の方程式』(自由国民社)より一部を抜粋・再編集したものです。

リーダーのための対話の方程式

リーダーのための対話の方程式

田口 淳之介

自由国民社

対話が変われば、人間関係が変わる。 営業も人事も人材育成もチームマネジメントもパートナーシップも、すべては「対話」が創り上げている。 毎月20社以上、全国の企業で「対話の仕方」を教える著者が、延べ2万人と対話して…

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