老後資金はいくら必要なのか? いろいろな意見がありますが、結局は「それぞれのライフスタイルによって異なる」が正解のようです。ただっ資産形成を進めるにしても、何かしら目標があったほうがいいもの。そこでよく言われる「2,000万円」を目標とした場合、どのようなプランニングが考えられるのか、リズム株式会社の資産コンサルタント、山崎博久氏が解説します。
1,000万円を20年で倍にする…老後のための資金計画【資産コンサルタントの解説】

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まずは資産運用の準備

2019年6月金融庁の金融審議会が発表した報告書の中に「平均的なモデル世帯では公的年金の老齢給付以外に1,300万~2,000万円の老後資金が必要」と明言されたことは、世間に大きな衝撃を与えました。のちにこの報告書は取り下げられましたが、公的年金だけでは老後生活を維持できず、金額の多寡はあれども老後資金を準備する「自助」が欠かせないと多くの人が再認識させられたのではないでしょうか。

 

もし本当に老後資金が2,000万円程度必要だとしたら、それを自力で用意するのに節約や貯蓄だけでは困難ではないでしょうか。ある程度の金額を貯蓄などで準備したら、次のステップとして資産運用を取り入れた資金計画にシフトしていくことが重要となってきます。

 

そこで1,000万円の手持ち資金をもとに投資期間20年で2,000万円に到達するための資産運用を取り入れた資金計画について検証してみましょう。

 

まず老後のための資産運用を始めるには、まず家計の収支を黒字化することが先決です。なぜなら家計が赤字では資産運用で収入を得られたとしても赤字分の支出で資産が減少してしまい貯蓄どころではないからです。ちなみに総務省が発表している「平成30年家計調査年報(家計収支編)」によると40歳未満の2人以上の勤労者世帯における黒字率の平均は、世帯全体の可処分所得に対して37.4%となっています。

 

自分の家計の黒字率を確認して充分な場合はそれを維持し、不足している場合は支出を見直し黒字率を上げられるようにしましょう。

20年で資産を2倍にするに必要な年利は何%?

金融商品などによる資産運用には、元本保証がありません。元金以上にもうかる可能性はありますが同時に大きな損失を被るリスクもあります。資産運用で元本割れのリスクを抑えるために有効なのが、時間を味方につけるということです。20年間で資金を2倍にしようとする場合、必要な年利は約3.6%です。もし15年で2倍にしようとするなら4.8%、10年なら7.2%もの年利が必要となります。

 

資産運用の世界では、リスクとリターンはイコールと言われています。そのためローリスク・ハイリターンという投資方法は存在しません。年利が高い投資ほど元本割れのリスクは高まります。手持ちの資金を準備するのが遅れたり資産運用を開始するタイミングが遅くなったりすると、意に反した投資方法しか選択できなくなり結果的に大きな損失を被ってしまうかもしれません。

老後資金を準備するための資産運用とは?

老後資金とは、人生の晩年で使用するための資金のことです。一般的に労働による収入は、定年退職すると一気に少なくなってしまいます。そのため株式やFXといったハイリスク・ハイリターンとされる金融商品で資産運用すると損失を被ってしまった場合、労働収入での穴埋めが難しくなるでしょう。

 

またローリスクとされる国債や外債は、年利があまり高くないためローリターンです。一方で債券発行体によっては、債務不履行に陥り元本が大きく毀損してしまう可能性も否めません。

 

これら以外の資産運用方法としては「不動産」が有力な資産運用の選択肢の一つになってきます。不動産投資は、実物不動産という裏付けがあるため、元本の変動が比較的小さく毎月の賃料という安定した収入を得られるのが大きな特徴です。そのため老後資金のように大きなリスクを避けたい資産運用に適した方法だと言えるでしょう。

 

一般社団法人日本不動産研究所の「第40回不動産投資家調査」によると2019年4月における東京都城南地区のワンルームタイプの期待利回りは4.3%が見込まれており、計算上20年で資産を倍にできる年利3.6%を上回っています。不動産にも戸建てやマンションなど種類はさまざまです。ワンルームマンションは価格も比較的抑えられるうえに、社会人、学生、外国人就労者など多くのニーズを取り込めるため、不動産投資のスタートアップには適していると言えるでしょう。

J-REITや投資信託という選択肢

不動産を購入して賃貸するだけが不動産投資ではありません。もう一つの選択肢が証券化された不動産投資です。最近注目を集めているJ-REITも証券化不動産投資の一つです。J-REITは、多くの投資家から資金を集めて収益不動産に投資し、そこから得られる収益を分配する金融商品です。個人だけでは購入が難しいオフィスビルやリゾートホテル、ショッピングモール、物流センターなどさまざまなタイプの不動産に分散投資ができます。また急に資金が必要になった場合も株式同様に証券取引所で証券化された不動産を売買でき、すぐに現金化できるため流動性が高いことが特徴です。

 

もちろん一般的な投資信託でも利回り3.6%は実現可能な数字と言えるでしょう。つまりいずれの方法を選択するにせよ、1,000万円の原資の運用方法次第では20年で2,000万円という目標達成は期待できるのではないでしょうか。

 

この目標達成のために最初にすべきことは「20年」という十分な投資期間を確保することです。時間が経過するほど損失を被ったときにリカバリーが困難になるでしょう。無駄なリスクを取らないよう不動産投資のようなミドルリスク・ミドルリターンの資産運用をベースに、リスクを分散しながらコツコツと資産形成を始めてみてはいかがでしょうか。