(※写真はイメージです/PIXTA)

教育への関心が高まり、小学校低学年からの塾通いも珍しくない時代となりました。ただし一口に「塾」といっても、学習サービスの内容や質はかなり大きな差があります。「大手の塾なら安心」「とりあえず通わせるだけでも、少しは学力がつくだろう」と気軽に考える保護者も少なくありませんが、残念ながら実態はそうではないようです。塾講師として実際に指導している花咲スクール代表・大坪智幸氏が、塾業界の現状を解説します。

「広告、体験授業、口コミ」はまったくアテにならない

私自身は、特定の塾や事業者を非難するつもりはありません。けれども、いわゆる大手学習塾、駅前など通いやすいところに多数展開しているフランチャイズ系の学習塾は、かなりいろいろな問題があると思っています。

 

いちばんの問題は、立派なテレビCMや宣伝広告をして多数の生徒を囲い込んでいながら、学習指導をはじめとしたサービス内容、教育の質がまったく伴っていないことです。いわばパッケージだけは立派ですが、中身が伴っていないといったところです。ほかの業種でそんな商品を販売すれば、おそらく詐欺だとすぐに訴えられます。しかし塾業界では、なかなかそれが問題視されにくい構造になっています。

 

フランチャイズ系の塾でよくあるのは、入塾を希望する親子の対応をするのは教室長や案内担当者、体験授業はエース級講師というパターンです。

 

入塾相談のときに対応するのは、スーツ姿でいかにも信頼できそうな教室長や案内担当者です。初めて塾へ来て緊張している親子の心情に寄り添いつつ、受験への不安をさりげなくあおる。そういうセールストークに長けた人物です。そして、ひとしきり話をした後、「一度、体験授業を受けてみませんか」と誘います。

 

次に体験授業へ行ってみると、話がうまく授業力の高いエース級の講師が、授業を担当します。「こんな先生に指導してもらえば、学力がつきそう」と思うように絶妙に演出されていますから、多くの親子がそこで入塾を決めてしまいます。

 

しかし、ここでよく考えなければいけません。

 

実際に入塾をしてわが子の普段の授業を担当するのは、体験授業で講義したエース講師ではありません。ほとんどはアルバイトの大学生かフリーターといった人たちです。私はこうした人たちを、親しみと揶揄を込めてインスタント講師と呼んでいます。形としては講師ですが、子どもが学校で分からなかったことを理解させるだけの指導力は、そもそもありません。しかも、違う講師が入れ替わり立ち替わりで、なんとかコマを埋めているというところも多々あります。

 

しかし日本では、教えてもできないのは子どもの能力や努力不足のせい、つまり個人の問題ととらえられがちです。その結果、こうした詐欺のようなやり方が表立って批判されることもなく、まかり通ってしまうのです。

 

大手塾では、ネット上の口コミ評価の操作なども、手抜かりがありません。教育関連企業の社員や教室スタッフが高い評価の書き込みをするのは、日常茶飯事です。

 

あるいは学習成果とはまったく関係なく、ただ人の良さそうな生徒や保護者を探して書き込みを依頼し、謝礼でクオカードを配ったり、割引をしたりしているところもあります。もっといえば、同業他社を貶めるために悪い評判を書き込みする塾まであります。私が経営する塾も、事実と異なる内容で同業他社から勝手に批評されており、今後の対応を専門家と検討中です。

 

要するに、塾検索サイトの評価の星の数や口コミコメントは、まったく当てにならないということです。

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※本連載は、大坪智幸氏の著書『デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」

デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」

大坪 智幸

幻冬舎メディアコンサルティング

知育と徳育の両面から指導すれば、子ども一人ひとりの生きる力を引き出せる。 「塾屋」が提言する学びの本質とは? 学習塾を経営し自ら教壇に立って指導をする著者は、現在の受験本位の教育は本当の意味で子どものために…

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