認知症は、認知機能が損なわれる症状の総称であり、原因となる疾患によってさまざまな種類があります。そこで本稿では、「4大認知症」ともいわれる代表的な4種類について見ていきましょう。認知症の専門医・旭俊臣医師が解説します。

③レビー小体型認知症

レビー小体と呼ばれる、変性したタンパク質が大脳皮質や脳幹の神経細胞に蓄積することで起こる認知症。アルツハイマー病で見られるような記憶障害や判断力の低下のほかに、幻視(実在しないものが見える)がよく見られるのがこの認知症の大きな特徴です。これは、視覚をつかさどる後頭葉の大脳皮質にレビー小体が蓄積しやすいためです。

 

また、手が震える、前屈みなど身体がこわばったようになる、身体のバランスをとりにくい、表情が乏しくなるなどのパーキンソン病のような症状も出やすくなります。うつ傾向も多くの場合で見られます。このため、医療側にとっては、パーキンソン病やうつ病との鑑別診断が重要になってきます。

 

アルツハイマー病と同様に進行性ではあるものの、レビー小体型認知症は症状が軽快したり悪化したりを繰り返しながら、徐々に進行していきます。日によって調子が良いときと悪いときの差が大きいのが特徴です。

 

〈レビー小体型認知症の特徴〉

□実際にはいない人や動物、物が見える。誰かが家の中にいると言う

□見えたものに対して話しかける。追い払うなど反応する

□介護者など、身近な人を別人と間違える

□動作が緩慢になった

□小股で歩く

□睡眠中に大声や異常な行動(体動)をとる

□失神や立ちくらみがある□悲観的である

□頭がはっきりしているときと、そうでないときの差が激しい

④前頭側頭型認知症

何かの原因で前頭葉や側頭葉が萎縮して起こる認知症です。アルツハイマー病と同様、変性したタンパク質の蓄積が認められますが、原因やタンパク質の種類はさまざまあり発症機序は明確になっていません。

 

ただし、前頭側頭型認知症の8割程度は、神経細胞にピック球と呼ばれる病変が現れる「ピック病」であるといわれています。40~60代と比較的若い世代の発症率が高く、比較的初期のうちから性格が急に変わったようになり、行動異常を伴うことが特徴の一つです。

 

行動異常とは、例えば同じ行動を繰り返す、反社会的な行動がみられる、集中力や自発性の低下などが挙げられます。店で未精算の品物を持ちだしたり、信号無視をしたりなどのルール違反を罪悪感なしにしてしまうこともよくあります。しかしほかの認知症と同様、本人にはまったく病識がありません。

 

一方、認知症の典型的な症状とされる記憶障害はあまり見られません。それもこのタイプの認知症の大きな特徴です。

 

〈前頭側頭型認知症の特徴〉

□以前よりも怒りっぽくなった

□最近、嗜好の変化があり、甘いものが好きになった

□些細なことでいきなり怒り出す

□こだわりがある。まとめ買いをする

□決まった時間に決まったことをしないと気が済まない

□コロコロと気が変わりやすい

□万引きなどの反社会的行動がある

□じっとしていられない

□同じ経路でぐるぐると歩き回ることがある

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    ※本連載は、旭俊臣氏の著書『増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症

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    旭 俊臣

    幻冬舎メディアコンサルティング

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