危なっかしい部下にはつい手を差し伸べたくなりますし、チームに厳しい要求を出して嫌われるのはつらいもの。しかし、チームをまとめて組織を浴していくためには、いくつか覚悟を決めなければいけないこともあります。人間関係作りの視点から、脳神経外科医として活躍する筆者が解説します。

仕事を任せるときは「期待しすぎず、相手を見守る」

職場でも家庭でも、上に立つ人間の考え方や態度によって、下にいる人のモチベーションや士気はまったく違ってきます。そして、本人が自分で目標を立てて、自らやる気を出さなければ何ごとも続けていくのは難しくなります。

 

僕は人を育てるためには、まずその人の自主性を育み、自分からやりたいと思えるような環境をつくることが大事だと思っています。

 

そして、ある程度の失敗は覚悟しながら見守ることが必要です。

 

僕自身、初めて一人で手術を任されたときのことは今でもよく覚えています。僕が手術を担当することが決まり、いざ手術となったとき、当時の上司がすっとどこかにいなくなったのです。そうなると、もう一人でなんとかするしかありません。そのとき胸に抱いていたのは、自分でなんとかしなければいけないのだという責任感と、自分は信頼された、任されたのだという誇らしさでした。

 

たぶん、上司はそれを見越して席を外したのだと思います。

 

僕も今は部下に対して同じように接しています。これなら大丈夫だと安全を確認したうえで「もうお前に任せたからな」と言って手術室を出ていくのです。この「お前に任せた」が人を育てるのだと思います。

 

子どもに対しても、何でも危ないからといって止めるのではなく、本当に危険なもの以外は体験によって会得させることが大事です。子どもは、石ころのあるところで走ったら危ないということを、自分で転ぶことによって知ります。すり傷ができるかもしれませんが、転んだら痛いことを知れば次からは気をつけるはずです。落ちる怖さを知れば、むやみに高いところに登らなくなります。

 

とはいっても、相手を信じて任せるのは難しいことです。

 

僕も若い人に手術を任そうと思っていたのについ横から手を出してしまい、気がついたらほとんど自分でやっていたなんてこともありました。どこまで相手を信じて任せるかは難しい問題です。

 

人に任せるときに僕が一つ心に留めているのは、相手に期待し過ぎないことです。

 

相手に期待し過ぎると、うまくいかなかったときの落胆が大きくなり、その分、叱責してしまって相手を傷つけることになりかねないからです。過剰に期待することでお互いに余計なストレスを生み出してしまうのです。

 

わが子に大きな期待を寄せ過ぎる親がいます。自分はピアノがまったくできないのにわが子には一流のピアニストになってほしいと願うとか、自分よりもずっと上のレベルの学校に通わせたいと思うなど、その期待が大き過ぎると子どもは窮屈になってしまいます。

 

たとえ有名な音楽学校や偏差値の高い学校に合格できたとしても、その子は親の過剰な期待に応えるために、ハードな環境のなかで無理をし続けることになってしまうのです。親が子どもを正しく見極めないと、わが子に身の丈以上のものを求めてしまい、無理を押し付けて苦しめてしまいます。

 

ですから、相手に期待はするけれども決して期待し過ぎず、見合った能力を見極めてサポートすることが大事だと思います。黙って見守るというのはなかなか難しいことですが、人を育てるにはこれが一番なのです。

 

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郭 樟吾

幻冬舎メディアコンサルティング

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