(写真はイメージです/PIXTA)

社会において、我々は職場や家庭など日々大小あらゆる規模で会議を行います。国際規模で代表的なものは国連です。目下、ロシアがウクライナの原子力発電所に攻撃したことを受けて国連安保理が緊急会合をひらくなど、国際問題について話し合い方向性を定める重要な機会となっています。今回はニッセイ基礎研究所の篠原拓也氏が、そんな国連安保理がどのように議決を行っているかについて解説します。

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    拒否権が発動されても、他の14カ国の賛成で再可決・成立できるよう、議決方法を変更したら…

    以上のように、拒否権のパワーは強すぎる。そこで、架空の話として、もし、ある常任理事国が拒否権を発動した場合でも、他の14ヵ国(他の常任理事国4ヵ国と非常任理事国10ヵ国)が賛成することによって、再可決して議案を成立できるよう、議決方法を変更したらどうなるだろうか。

     

    上記と同様の計算をしてみよう。この場合は、常任理事国であるアメリカのパワーは、194,387,558,400/1,307,674,368,000となる。これは、0.14865という値になる。

     

    他の常任理事国も同じパワーを持つから、常任理事国全体では、約0.74326(≒0.14865×5)。非常任理事国は、全部合わせて残りの0.25674(=1-0.74326)のパワーとなる。非常任理事国のうちの1ヵ国は、その10分の1で、0.025674となる[③]。

     

    ③拒否権が発動されても、他の14カ国の賛成で再可決・成立できるよう議決方法を変更した場合

     

    このように議決方法を変更した場合の投票力を計算してみよう。

     

    常任理事国のパワーについては、①の計算過程を少し変更する。

     

    15番目に投票して議案が成立するような投票順は、1通り、87,178,291,200通り、1通り、の3つの数を掛け算して、87,178,291,200通り。という部分は、カウントしない。

     

    その代わりに、アメリカが14番目に投票して議案が成立するような投票順として、①であげたほかに、15番目にアメリカ以外の常任理事国が投票するケースをカウントする。

     

    これは、アメリカの前に投票する13ヵ国の投票順、13の階乗(13!)=6,227,020,800通りと、15番目に投票する常任理事国の選び方、4通りを掛け算して、24,908,083,200通りとなる。

     

    ①の計算結果をもとに、計算しなおすと、合計で194,387,558,400通りとなる。
    (=256,657,766,400-87,178,291,200+24,908,083,200)

     

    したがって、アメリカのパワーは、194,387,558,400/1,307,674,368,000となる。これは、0.14865という値になる。

     

    ちなみに、非常任理事国のパワーを直接求める②の計算は、つぎのように変更となる。

     

    ある非常任理事国が14番目に投票して議案が成立するような投票順として、15番目に常任理事国が投票するケースをカウントする。これは、この国の前に投票する13ヵ国の投票順、13の階乗(13!)=6,227,020,800通りと、15番目に投票する常任理事国の選び方、5通りを掛け算して、31,135,104,000通りとなる。

     

    これと②であげたものを加えて、合計で33,573,657,600通りとなる。
    (=2,438,553,600+31,135,104,000)

     

    この国のパワーは、33,573,657,600/1,307,674,368,000となる。これは、0.025674という値になる。

     

    常任理事国のパワー0.14865に対して、非常任理事国のパワーは0.025674となる。常任理事国は、非常任理事国の約6倍のパワーを持つようになる。まだ、約6倍もパワーの違いは残るが、現在の約105倍の違いに比べれば、常任理事国と非常任理事国の投票力の格差は、だいぶ縮まることとなる。

    家族会議でも応用してみるとよいかも

    さて、ここで、話を国連安保理から家族会議に大きく転換してみよう。

     

    いま、「つぎの連休にはどこに旅行にいくか?」について、家族の間で白熱した話し合いが展開されているとする。もし、話し合いがまとまらなければ、これまでに出されたいくつかの案の中から、採決を行うことになる。

     

    家族が公平に一票ずつ投票していって、多数決で決められれば、旅行先は決着するはずだ。だが、もしかしたら、家族のうち誰かが拒否権を持っているかもしれない。

     

    そんな場合には、家族のそれぞれの投票力を計算してみるとよいように思われるが、いかがだろうか。

     

     

    篠原 拓也

    ニッセイ基礎研究所

     

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年3月1日に公開したレポートを転載したものです。

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