「実力不足を痛感したので、実力をつけていかないといけない」
敗れた第4局の対局後、豊島はそう語った。2年前に語った危機感が早くも顕在化した形だが、ここまで厳しい現実が待ち受けていることは豊島自身もイメージしていなかっただろう。この先、藤井と互角に戦っていけるのか――。豊島が直面している試練は、これまでより一層厳しいものと言えるのかもしれない。
「またタイトル戦で活躍できるように頑張りたい」
竜王戦の敗戦から8日後の11月21日。豊島は将棋日本シリーズJTプロ公式戦(JT杯)の決勝という舞台で再び藤井と対戦した。豊島には2年連続3回目、藤井には初めての優勝が懸かっていた。
JT杯は多くのファンが観戦する公開対局として行われる。この日、会場の千葉・幕張メッセでは1千人を超す人たちが戦いを見守った。和服に身を包んだ両者の戦いは激しい攻め合いとなったが、豊島が95手で勝利し、藤井に一矢報いた格好となった。
感想戦とセレモニーを終えた豊島は、最後に優勝の感想を述べた。
「JT杯は初めて優勝できた棋戦。無冠で苦しんでいた時期に励みになり、それから結果を出すことができました。これからまたタイトル戦で活躍できるように頑張りたい」
捲土重来(けんどちょうらい)を期す豊島と、四冠となった藤井。2人の戦いは、まだ始まったばかりだ。
村瀬 信也
朝日新聞 記者
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