現在、ロシアによるウクライナ侵攻が続いています。ある国の軍隊が相手国に攻め込んで一部を占領したとします。すると治安維持や人心の掌握が必要となります。同時に、進駐している軍隊のためにいろいろな物資を調達する必要もあります。戦争では何が最も重要なのでしょうか。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

中国共産党が国民党に勝てた本当の理由

いまから見ると、当時何よりも大切だったのは通貨を乱発しないということでした。いま流に言えば財政規律みたいなものをきちんとやって、人民元に対する信用がずっと保たれたということです。

 

それだけ国民党の法幣の乱発がひどすぎたこともあります。人心が蔣介石の国民党から離れてしまった。蔣介石の敗因は経済的な部分が大きいのです。

 

私の調べたところでは、軍備は国民党軍が共産党軍を圧倒していました。当初はアメリカからの支援を受けていたわけですから。ただあまりにも汚職がひどかったため、途中で「お前ら、あかん」とアメリカの支援が消えてしまった。これも経済的な要因と言えるでしょう。蔣介石本人は強欲な独裁者ではなかったと思うのですが、宋一族、とくに宋美齢の弟の宋子文が大変なワルで、自滅したのも同然です。

 

■中国共産党が国民党から得た教訓

 

中華人民共和国の通貨金融制度がなぜ事実上ドル本位、ドルに裏付けさせるのか、外貨準備にあれだけこだわるのかというと、第二次国共内戦の国民党から得た教訓があると思います。悪性インフレを引き起こしてしまったら、人心が離れてしまうことを痛感した。

 

もしそれを招いてしまったら、共産党政権は崩壊するという、それを反面教師ですべて理解しているわけです。辺境にいた毛沢東が蔣介石に勝てたのは、それに尽きるのです。

 

結局人心を掌握するのにいちばん大切なのはお金だということです。あるいは経済を安定させることです。

 

いまの中国は自国の一般の人たちを抑圧しています。とくに言論に関しては顕著です。政治的に共産党に反対する者、あるいは好きなことを言って共産党や指導者を否定する者、こういう人たちを抹殺したがるわけです。漢民族を自称する圧倒的大多数の中国人で構成される、中国共産党による統治に馴染まない少数民族を弾圧する。ウイグルはまさにそうです。

 

一方で、お金の部分で一般の人たちが安心できる環境をつくっておけば、反旗を翻すことがないことはよく理解していると思います。だから、とくにインフレを怖がっています。

 

天安門事件のとき、じつは結構インフレ率が上がっていました。だからほんとうに改革開放路線を推進しても、決して通貨の乱発はしていないのです。

 

田村 秀男
産経新聞特別記者、集委員兼論説委員

 

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    本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

    「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

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