(写真はイメージです/PIXTA)

多くの費用を要する不動産の売買においては、思い違いや伝達不足などを理由に、トラブルに発展するケースが後を絶ちません。本記事では、不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士が頻出事例をもとに、不動産売買におけるトラブル予防策を紹介していきます。

「建物」に関する不動産売買トラブル

不動産売買トラブルのうち建物に関するものには、主に契約不適合に関するものと心理的瑕疵に関するものがあります。それぞれ見ていきましょう。

 

①契約不適合によるトラブル

売主は買主に対して、契約したとおりの状態で建物を引き渡すことが必要です。実際に引き渡した建物が仮に契約に適合していない場合には、損害賠償責任を負ったり修繕を求められたりすることとなります。

 

そのため、仮に建物内の設備が故障している場合や雨漏りがある場合、シロアリの被害がある場合などには、問題の解消に必要なリフォームを行ったうえで売却するようにしましょう。

 

また、仮にそのままの状態で売却する場合には、問題の内容を買主にあらかじめ説明をしたうえで、その旨を契約書に明記しておくことが必要です。

 

特に雨漏りやシロアリなどは建物の主要な構造部に影響を与えるものであり、応急措置をしたのみで解決できるものではありません。表面だけを隠してもすぐに発覚して問題になる可能性が高いため、買主に告げないまま売却することはしないようにしましょう。

 

②心理的な瑕疵(かし)に関するトラブル

「瑕疵(かし)」とは、不動産売買の際によく使われる用語であり、傷や欠点を意味します。なかでも心理的な瑕疵とは、たとえ物件の機能自体には支障がなかったとしても、買主が心理的に抵抗を感じる事柄のことです。

 

たとえば、過去にその物件内で亡くなった方がいる場合などのいわゆる「事故物件」である場合や、周囲にお墓があったり暴力団関係施設があったりする場合などがこれに該当すると考えられます。

 

こうした心理的な瑕疵について、どこまで告知が必要なのかについては、国土交通省が公表している「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」などを参考にすると良いでしょう。

 

これによれば、たとえば次の場合には告知しなくてもよいとされています。

 

1.対象不動産で発生した自然死や、日常生活のなかでの不慮の死(転倒事故、誤嚥など)
2.対象不動産の隣接住戸又は日常生活において、通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した1以外の死や、特殊清掃等が行われた1の死

 

ただし、ガイドラインでは「買主・借主の意向を事前に十分把握し、人の死に関する事案の存在を重要視することを認識した場合には特に慎重に対応することが望ましい」とも記載されています。

 

ガイドラインは、あくまでも一つの基準でしかありません。たとえば、買主がその物件での死亡事案の有無を特に気にしている場合、ガイドライン上では告知しなくてもよいとされたものであったとしても、後のトラブルを防ぐためには丁寧に告知をすべきでしょう。

「マンション」に関する不動産売買トラブル

マンション特有のトラブルとしては、管理規約の説明不足や管理費滞納に関するものが考えられます。

 

①管理規約の説明不足によるトラブル

管理規約とは、そのマンション全体に適用されるルールです。この管理規約の内容はマンションによってさまざまで、たとえば民泊の禁止やペット飼育の禁止、事務所利用の禁止などが定められている場合があります。

 

当然ながら、買主が購入前に規約を知らなかったからといって、こうした規定が適用除外になるわけではありません。

 

そのため、マンションを売却する場合には、管理規約について丁寧に説明をしておくことが必要です。

 

たとえば、ペットを飼育している人にペット禁止を告げないままペット禁止の規約があるマンションの1室を販売してしまった場合には、大きなトラブルとなりかねないでしょう。

 

②滞納管理費がある場合のトラブル

マンションを購入すると、管理費や修繕積立金を毎月支払わなければならないことが一般的です。

 

仮に管理費や修繕積立金を滞納した場合、その滞納した分の支払義務者は、その滞納者のみであると考えることが通常かと思います。

 

しかし、区分所有法の規定によれば、管理費や修繕積立金が滞納された部屋が売却され持ち主が変わった場合には、前の所有者が滞納していた管理費や修繕積立金について、その部屋の新しい所有者へ請求することができるのです(もっとも、管理費にどのような費目が含まれるか、修繕積立金が請求できるかは管理規約の内容によって異なります)。

 

そのため、前の所有者が管理費や修繕積立金を滞納していたかどうか、売買時によく情報を共有しておく必要があるといえます。

 

次ページ「ローン審査落ち→購入キャンセル」でトラブルに

本記事はAuthense不動産法務のブログ・コラムを転載したものです。

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