(※写真はイメージです/PIXTA)

いま現役で働いている人々は、将来どれだけの年金を受給できるのでしょうか? 厚労省の「財政検証」では、将来の厚生年金給付について6つのケースをシミュレーションし、標準ケースで「年金受給額は減らない」と推計しています。しかし経済アナリスト・森永卓郎氏は、これを「非現実的な想定を置いたバラ色の未来と指摘」し、最も悲観的な“ケースⅥ”こそ現実的と考えます。ケースⅥを前提に単純計算すると、2052年の夫婦2人のモデル年金は月13万円程度という結果に…。老後の生活設計を考えるために、今回も将来のリアルな年金月額について検証していきましょう。

月額13万円…将来「年金だけ」で暮らすことは可能か?

金融庁の報告書では、年金だけで生活している高齢夫婦世帯の月額支出は26万円だった。年金月額が13万円になるということは、年金だけで暮らそうと思うと、支出を半減させることが必要になる。そんなことが現実問題として可能なのか。

 

2019年「全国家計構造調査」によると、2人以上世帯のなかで月額消費が10万円未満の世帯が4.1%、10万円以上15万円未満の世帯が13.1%存在している。大雑把に言うと6世帯に1世帯が13万円以下に消費を抑えているのだから、年金だけで暮らすことは不可能とは言えない。しかし、平均の消費額は27万9066円となっているから、月額13万円だと、人並みの暮らしができないどころか、相対的貧困に陥ることは明らかだ。

 

また13万円というのは、あくまでも夫婦の年金だ。例えば、サラリーマンの夫が妻に先立たれた場合の年金月額は9万3000円になる。この収入だと所得税や住民税はかからないが、健康保険料と介護保険料はかかってくる。これが月額7417円かかるから、手取りは8万5583円となる。これで生活が成り立つのかを考えてみてほしい。

 

 

ちなみに、2021年11月10日付の朝日新聞によると、介護保険料を滞納して預貯金や不動産などを差し押さえられた65歳以上の高齢者が、2019年度に過去最高の2万1578人だったことが分かったという。いまの年金水準でも、これだけの人が介護保険料を支払えないのだから、年金給付が4割下がったら、保険料を支払えない高齢者が激増することは、明らかだろう。

 

つまり、このまま行くと、平均的な日本人が高齢期を迎えると、「長生き地獄」にまっしぐらとなってしまうのだ。

 

 

森永 卓郎

獨協大学経済学部 教授

 

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※本連載は森永卓郎氏の著書『長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋』(KADOKAWA)から一部を抜粋し、再編集したものです。

長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋

長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋

森永 卓郎

KADOKAWA

夫婦2人の公的年金「月額13万円」時代がやってくる――長生き地獄を避けるには? 高齢者の生活を支えてきた公的年金が、今後ずるずると減り続けていく。今から30年後には平均的サラリーマン世帯だった夫婦2人の年金が、月額…

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